今年も未踏ジュニアの成果報告会が11/3(祝)にあり、自分も行ってきたのでその感想とか。
全体的な感想
相変わらず全体的にレベルが高く、今年も楽しく見ることができた。 クロージングで近畿大学の方もおっしゃってたけど、しっかりとユーザテストを行なって、フィードバックを反映できてるプロジェクトが多いのはとてもいいよね。
あと、生成AIもなんかもう道具として自然に溶け込んでる感じで、それを目玉にしているというより、さらっと使っている印象だった。 学習サポートとして用いる場合も、ノートや教科書の内容を取り込んで使うようになってて、そんなのも最近っぽいなと感じたり。
そんな感じで全体的にとてもいいんだけど、そうなってくると個人的にはやっぱり「これがやりたいんだ」みたいな動機がハッキリ見えるプロジェクトの方が刺さった。 あとでちょっと言及したいけど「Paper CAD」とか「TalkBoost」とかは特にそれがあった気がする。 一方で、「SynRM」みたいに、直接的な理由は語られなかったけどそれに掛ける努力と技術の高さから、なんか知らんがとんでもない熱量を持ってるんだなというのが伝わってくるプロジェクトもあったりするのが面白くもあったりするけど。
以下はいくつか印象に残った発表について。
Paper CAD
今回の発表の中で個人的に一番印象に残ったもので、「なるほど、そんな課題、需要があったのか」と目から鱗だった。
紙を使ってミニチュアの建物を作るときに、一番大変なのが建物の展開図を作ること。 それを、住所検索とかモデリングアプリから3Dデータを取り込んで、自動で展開図を作れるようにしたアプリ。 さらに、3Dモデルと展開図との対応を分かりやすく表示してくれたり、組み立てでも便利な機能は入ってる。
まず、紙でミニチュアの建物を作るというニーズがあることを知らなかったので、そこにビックリした。 たしかに言われてみれば模型とかでジオラマを作ってる人には刺さるニーズよね。 こういった自分の知らない分野での隠れたニーズを知れたのがとても大きい。 あと、そういうのが作れると分かると、自分でも作ってみたいなと思ったり。 作るのも飾るのも面白そう。
そして、国土交通省がPLATEAUという3D都市モデルを出してるのも知らなかったので、そんなのがあるんだとこれまた驚いた。
これを使って住所から建物の3Dデータを引っ張ってこれると。 使ってるデータフォーマットがちょっと特殊らしく、変換とかで苦労があったみたいだけど、そこを熱量持って取り組んだのはさすがという感じ。
あとは、実際に自分が第一のユーザとして、こうだったら使いやすいという機能を実現していってるのもとてもいい。 こういうDIY精神って、OSSとか同人誌の好きな自分としては、とても好感が持てた。
最適化やってる身としては、展開図をどのように作ってるのかもちょっと気になった。 同じ図形でも展開図は何通りか考えられるわけで、どういう評価軸で考えて最適なものにしてるのかなぁと。 たとえば、使う紙の面積が最小になるようにするとか、接着する辺の長さが最小になるようにするとか、いろいろ軸は考えられそう。 それがどんな形で最適化問題に落とし込めるのかとか、面白そうよね。
TalkBoost
吃音症の方の発話意欲を高めたいという想いで作られたアプリ。 デバイスを身につけて生活して、どんなときに吃音がでやすいかを分析し、ふりかえりができるようになってる。 発表者自身、吃音があっていろいろ諦めてきたことがあったけど、それでもやっぱり伝えることが大事だと思うようになり、このアプリを作ろうと思ったとのこと。
発表も大変そうだったし、緊張する場面だとより吃音も出やすかったと思うけど、堂々と発表できてたのが印象的。 自身がどうにかしたいと思ってる課題についてしっかり向き合って取り組んでいるのがいいよね。
吃音の話で思い出したのが『史上最強の哲学入門』とかを書かれている飲茶さん。 著書の一つである『飲茶の「最強!」のニーチェ』で、自身に吃音があったこととか、それがニーチェ哲学とどう関わってきたのかとかを書かれている。
その中では以下のような話も:
えっと、実はこれ、「吃音症あるある」なんだけど、吃音症の人って「言い換え」をうまくやれば、結構、会話ができたりするんだ。
ちょっと「五十音の表」を思い浮かべてみてくれないかな。 その表のうち、「ア行」と「カ行」が黒く塗りつぶされていると思ってほしい。 で、その黒くなった「ア行、カ行」から始まる単語を、僕は絶対に言うことができないんだ。 逆に言うと、「ア行、カ行」から始まらない単語だけを使えば、実はみんなと同じように会話ができるんだ。
ちなみに、その「使えない文字」の数は、日によって減ったり増えたりする。 調子が良い日は楽なんだけど、五十音の表が、ほとんど真っ黒な日もあって、そんな時はもう大変。 不自然な「言い換え」どころか、どんどん会話が虚言になっていく。
(いろいろ省略して引用)
なので、吃音の様子を分析していくこのアプリは、たしかに有効なんだろうなと思った。
ちなみに、この発表のように技術でアプローチしていく他に、飲茶さんのように哲学的な観点でアプローチしていく方向も、「発話意欲を高めたい」という心理的な問題の解決に役立つかもしれないので、興味があればこの飲茶さんの本も読んでみてほしいな。
Cian
ちょっと違う観点でなるほどなぁと思ったことがあったのがこの発表。
このアプリは、日記をもっと気軽に書いて、さらにふりかえりも気軽にできるようにしようというもの。 ここで、いろんな性格を持ったペルソナ(AI)が用意されていて、悩みを相談したり、一緒にふりかえりができるようになっている。
発表された方は過去に日記でのふりかえりで立ち直ったこともあるとのことで、だから日記を書くことは有意義で、それゆえ多くの人に日記を書いてほしいとこのアプリを作ったとのこと。 これはそうだよなぁと思いつつ、実際に強かったのはいいふりかえりができてたからかなとも思ったり。 日記は入り口で、もちろん記録を残しておくだけでもあとから見返して面白かったりするのでいいんだけど、そこからしっかりとふりかえりをできてたのが大きいようにも思う。 そういう意味で、一日や一週間という単位で、日記という記録からふりかえりをするだけじゃなくて、もっとパッと思い立ったときにふりかえりするのでもいいのかも。 森さんのふりかえり本とか、きっと学べることが多いだろうから、読んでみてほしいと思った。
で、ここからが本題で、相談役としていろんな性格のペルソナを用意した理由が、いろんな性格のAIと話すことで自分にはなかった価値観を見つけたりしていけるから、というものだったんだけど、今はそういう時代なのかぁと思ったり。
自分とかだと、自分にこれまでなかった価値観とか考えを知りたいときには、人の話を聞きにいったり、本を読んだりすることが多かったよなぁと。 それが今はAIと対話するとかなのかと驚いた。 逆に言うと、そういうときに本を読む人も減ってるのかも。
考えてみると、本とか読むときに自分自身の価値観や考え方を変えたり深めていったりするには、著者がどのように考えているかを汲み取って、それに対して自分の考えをぶつけていき、思考を練っていくといった、著者と対話するような読み方が必要になってくるけど、そういった読み方ってどこかで習った記憶がないので、けっこう難しいことなのかも。 そういう意味で、実際に対話しながら考えを深めていけるのはいいのかもしれない。 エコーチェンバーとかはちょっと怖いけど、まぁそれを防ぐ意味でも複数のAIが用意されてるんだろうなぁ。
ちなみに、自分が未踏ジュニアとかの発表を見にきてるのはこの「知らなかった価値観や考え方を知りたい」という部分もあって、この発表もそうだし、前述したPaper CADとかは、そういう意味でも面白いと思った。
SynRM
この発表者は人工心臓を作りたいという強い想いがあるらしく、これまでにも部品となるものをいろいろ作ってきているようで、シンプルに凄いと感心した。 このプロジェクトは(たぶんポンプを動かすための動力として)永久磁石が不要で耐久性も高いモーターを作るというもので、正直原理とかはよく分からなかったんだけど、「なんか凄いことやってる」と感じさせる熱量があった。 こういう技術に全振りしたようなプロジェクトもやっぱりいいよね。
個人的に興味深かったのは、作ったモーターは省電力で発熱もほぼないという話。 それだけ電気エネルギーを効率よく運動エネルギーに変えられてるということなんだと思うけど、それは人工心臓以外にも使い道がありそうに感じた。 発表の中でも応用として電気自動車や電車に使う話が出てて、実際にはトルクがどうなのかとかはあるだろうけど、もし使えるのなら凄くよさそうよね。
こんなところかな。
今日はここまで!

