いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

『マインドセット 「やればできる!」の研究』を読んでみた。

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マインドセット 「やればできる!」の研究』がとても面白かったので、内容を簡単にまとめておく。

マインドセット「やればできる! 」の研究

マインドセット「やればできる! 」の研究

なお、この本を読んだの自体は去年。

ただ、今後どうしていくのか考えるために、上牧を旅行してるときに改めて読み直した。

能力は先天的か、後天的か

能力は先天的に決まっていて学習や経験では変化しないのか、それとも後天的に学習や経験で伸びていくものなのか。
このどちらが正しいのかは分からない。
けど、「どちらを信じるか」だけで結果にも差が生まれてきたというのがこの本の主題。
信念の持ち方が人の成長を大きく変えてしまう。

どちらを信じて行動するかという心のあり方をマインドセットと呼ぶ。
前者の「先天的に決まっていて変わらない」と信じている姿を「硬直したマインドセット(fixed mindset)」と呼び、後者の「後天的に伸びていく」と信じている姿を「しなやかなマインドセットgrowth mindset)」と呼ぶ。

功績をあげた人とそうでない人との違いを調べたところ、功績をあげた人はみなしなやかなマインドセットをしていたということ。
また、マインドセットが成長にどのような影響を与えるのかを心理学の実験で調べたところ、しなやかなマインドセットをしていると大きく成長できることが分かったという。

なぜ成長に差が出るのか

硬直したマインドセットだと、「人の優劣は生まれながらにして決まっている」と信じて行動することになる。
なので、自分がいかに優れた能力をもって生まれてきたのかを示し続けなければ、自分に存在価値を見出せない。
自分の能力を周りに誇示し続けなければならない。
バカにされたら負けと思ってしまう。

一方、しなやかなマインドセットだと、「能力は学習でいくらでも伸ばせる」と信じて行動することになる。
だから、現状で他人より劣っていたとしても、それは問題ではない。
学習で伸ばしていけると思っているのだから。
したがって、自分の能力を誇示することにはこだわらない。
そして、何かうまくいかないことがあれば、それは成長のチャンスだと捉えて努力する。

短期的には、自身の能力を誇示することにこだわり、失敗を極端に嫌う硬直したマインドセットの人が勝つことが多い。
(しなやかなマインドセットだと失敗を恐れないので短期的には失敗もよくする)
しかし、現状のままで勝負しようとするのか、よりよくして勝負しようとするのかを考えれば、長期的には、失敗を恐れずに成長していったしなやかなマインドセットの人が勝つのは当然と言える。

硬直したマインドセットだと、失敗したら自分には能力がないのだと露見することになるので、難しい問題に挑戦しようとせず、簡単な問題ばかり解いて自分ができる人間であることをアピールしようとする
けど、それでは成長しない。
一方、しなやかなマインドセットだと、成長していけると信じているので、成長するために難しい問題に挑戦する
もちろん、それで失敗はすることもあるが、そこから努力することで結果的に成長していける。
こうして信念一つで行動に差が生まれ、成長も変わってくる

経営者の例

本では硬直したマインドセットの経営者としなやかなマインドセットの経営者が具体的に紹介されている。
前者にはリー・アイアコッカアルバートダンロップ、後者にはジャック・ウェルチやルー・ガースナーの名が挙がっていて、彼らの行動が具体的にどう違っていたのかが紹介されていて面白い。

硬直したマインドセットの経営者の場合、自分は特別で、他人より優れていることを示すのに躍起になる。
なので、優秀な経営陣を嫌う。
自分だけが突出した存在でいたいと、周りを蹴落としていくことになる。
さらには、自分は特別な人間なのだから何をしてもいいと横暴になる
これでは会社がガタガタになってしまう。

全員が同じ考えで固まってしまうことを集団浅慮というが、トップが硬直したマインドセットだと集団浅慮に陥りやすい。
なぜかというと、異を唱える人がいると、徹底的に叩かれることになるからだ。
これではみんな萎縮してしまって活発な意見交換は行われなくなる。
(余談だけど、自分の元職場がまさにこんな感じだった。自分はボスにも意見してたけど、それが気に食わなかったのか怒鳴りつけてくるようになり、みんな「あぁ、ボスはそういう人なんだな」とボスに意見するのを止めるようになってしまった。賢い判断ではあるけど、健全ではないと思う。心理的安全性の確保って大切・・・)

しなやかなマインドセットの経営者の場合、自分だけが優れていることを示すのに躍起になるのではなく、会社全体が成長していくために努力する
みずから勉強し、また社員とも話し合って、チームとして成長していくことに力を注いでいる。
トップと違う考え方が出てきても、それを攻撃しないので、議論がオープンになって、集団浅慮にも陥りにくくなる。

本の「人はリーダーに生まれつくのではなく、リーダーになるのであり、しかも、外的な条件によってではなく、自分自身の力でリーダーになるのだ」という言葉が印象深い。
硬直したマインドセットでは、ボスにはなれてもリーダーにはなれない。

教育において

教育においてもマインドセットは重要になる。

褒めることの重要性は何度も言われているが、何を褒めるのかが重要だという。

なんと、頭の良さを褒めると学習意欲が損なわれ、成績も低下したという。
これは頭の良さを褒めると硬直したマインドセットになりやすくなるため。
成功したら頭がいいと褒められ、失敗したら頭が悪いと批判されるのであれば、難しい問題に挑みたいとは思わなくなる。

褒めるときには、努力して成し遂げたことを褒めるといい。
努力すれば成長していけることが分かり、しなやかなマインドセットになることができる。

たとえば、ある問題を素早く完璧にやり遂げてしまった場合、褒めるべきかどうか。
そうした場合、褒めるべきではないという。
素早く完璧にやることが大切なんだと学習してしまい、難しい問題には手を出さなくなってしまう。
こうした場合、問題が簡単すぎたと伝え、より挑戦的な問題を提示すべきだという。
問題を解くのに時間がかかったり手こずったりするのは悪いことではなく、それがまさに今成長しているということなんだということを伝え、その努力を褒めてあげれば、積極的に難しい問題に挑戦していくようになる。

失敗したときにどのような声をかけるのかというのも重要。
そういったときには下手に自尊心を守るような声をかけるのではなく、より努力が必要なことを伝えるといい。
失敗から学ぶことを促すのである。

そして、教育は教師にとっても学びの場である。

教師は、自分は完成された人間で、その知識を教授してるんだとなりがち。
しかし、どのように教えるのかも日々よりいいものにしていく必要がある。
できる子は元からできる子、できない子は元からできない子と考えるのは硬直したマインドセットで、子供たちはそう思われて教わると、できる子は失敗を恐れるようになるし、できない子は努力を放棄してしまう。
できない子もできるようにするにはどうしたらいいのかは難しい問題だけど、それだけに挑戦的であり、教師にとっても成長の機会になる。
しなやかなマインドセットを持っていないと、なかなかこうは考えられない。

そして、人は成長できるんだという信念で、高い水準の目標を与え、努力を促し、成長を期待して、粘り強く導いてあげると、子供もその期待を感じ取り、成長していくことができる。

人は成長していける

人は変わり続けられると信じていけば、変わり続けられる。
その信念が努力に、行動に繋がっていくから。

失敗や弱点を成長のチャンスと思うといい。
そして、そこから努力する。


読みながら「自分は硬直したマインドセットなんじゃないか?」と思うことが多かったけど、その思考自体が硬直したマインドセットっぽいと気づいた。
硬直したマインドセットならダメな人間で、しなやかなマインドセットなら優れた人間という感じで評価しようとしている。
自分はどうかという「評価」を下そうとしないで、しなやかなマインドセットを心掛けて成長していくことにだけ尽力するとよさそう。

そして、しなやかなマインドセットの姿はふりかえりにとても近いなと思った。
ふりかえりでは、犯人探しをしてはいけないというのがよく言われること。
犯人探しをするというのは、こいつはできないやつという硬直したマインドセットの考え方だし、そんなのではみんな失敗を恐れて何もできなくなってしまうから。
そうではなく、問題点を探して、それをカイゼンしていくという姿勢をすることで、どんどん新しいことにも挑戦していけるし、成長もしていける。

今日はここまで!

マインドセット「やればできる! 」の研究

マインドセット「やればできる! 」の研究