いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

未踏ジュニア2019年度最終成果報告会に行ってみた。

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10/22(祝)に未踏ジュニアの最終成果報告会に行ってきた。

この発表がどれも面白かったので、軽く紹介と感想など。

未踏ジュニアとは

IPAでは独創的なアイディアを持った人材をサポートするために未踏事業というのを行っている。

ただ、これだと競争が厳しくて小中高生ではなかなか採択されないので、17才以下の小中高生(+高専生)を対象として生まれたのが未踏ジュニア。

けど、昨日の発表を見ると、普通の大学での研究や企業でのプロジェクトにも引けを取らないような発表もあったりと、とてもレベルが高いと思った。
こういった小中高生がいるのはすごく希望がある。
ぜひとも、潰されることなく(出る杭は叩かれやすい・・・)、このまま成果を出し続けていって欲しいと思った。

以下はそれぞれの発表の概要と、自分の感想。

渡部さん「バトンマスター」

陸上部で、リレーのバトンパスを上手くできるようになりたいということから、バトンパスを計測するバトンマスターを作った。
バトンにM5Stackが入っていて、3軸の加速度データからバトンパスの様子を可視化できる。
普通のシステムだとお高いけど、これなら安くできる。

***

M5Stackで万歩計を作ってる人はIoTLTで見たけど、こういうことも出来るのかぁ、と感心した。
自身が陸上部だからこその視点と思った。
そしてそれをちゃんと物として作り上げる実現力は見事。

なお、距離を求めるのに、加速度の様子から何歩進んだのかを検出して歩幅と掛け合わせていたんだけど、加速度を積分していけば距離にならないものかなと思って質問してみた。
回答は、バトンの向きが変わってしまうので難しいのと、センサの誤差があるので正確な値を得るのが難しいとのこと。

誤差は確かにそうかも。
計測の間隔に限界があるから。
ただ、バトンの向きに関しては角速度を積分すればバトンの姿勢が分かりそうな気もした。

行方さん「Edge-guided Anime Characters Generation」

なかなか上手に絵が書けないので、深層学習による画像生成で描きかけの絵から完成した絵を作るシステムを作った。
線を引くたびに予測されるキャラクターの画像が生成され表示される。

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デモがとても面白かった。
そして、深層学習を普通に使いこなしてるとか凄い・・・
ライブラリなどを使えばいろいろ作れるんだから、凄い時代になったもんだなぁと思う。

一つ気になったのは、再現性。
お絵かきで一枚絵を描いて終わりということは少ないと思っていて、同じキャラで別ポーズをさせたり、あるいはマンガにしたりすると思うのだけど、このシステムの場合、そういった再現性を持たせて絵を書くのが非常に難しそうな気はした。
絵の練習にはとてもいいと思うんだけど。

武田さん「編模様(あもーよ)」

イラスト手編み支援アプリを作った。
編集モードと編みモードで切り替わって、編みモードだと今編んでいる段が分かりやすく表示される。
最初Scratchで作ったものをUnityへ移植したとのこと。

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身近なところにあった題材に対してとても素晴らしい解決策を提供していてとてもよかった。
発表にもその優しい雰囲気が滲み出てた。
使う人の気持ちを考えられるのはプロダクトオーナーとして非常に重要なので、とても素晴らしいと思う。

気になることとしては、優しすぎること。
こういう出来るいい人は使い潰されやすいので、潰されないで欲しい。
ホントに。
技術的にではなく、リソース的にできるかどうかも気にかけるといいと思う。

岸本さん「fresh capsule

家事の負担を減らしたいということで、賞味期限を管理できるアプリを作った。
以前作ったこともあって、そのときは手動で賞味期限を入力するのが大変だったので、OCRを使うようにした。

***

発表を聞いて最初に気になったのが、賞味期限管理アプリって既存でいいものないのかなぁということ。
実際、その場で調べてみたら、予想通りいろいろあった。
けど、意外にも賞味期限をカメラで読み取って入力するアプリはないみたい。

以前のふりかえりから改善点を見つけて新しい開発に進めているのがとてもいい。

気になったこととしては、登録もそうだけど、使ったときに印をつけておかないと不要な通知が飛んできそうだよなぁ、というのがある。
そうなると、使うたびに操作が必要で、それも面倒そう・・・
パッといいアイディアが浮かばなので、けっこう難しい問題なのかもしれない。

迫田さん「neulot-生体信号を用いたモーションキャプチャシステム」

SAOみたいなフルダイブを実現したくて、その第一歩として脳波、筋電位を使ってデバイスを操作するシステムを作った。
筋電位を使った義手操作はALTsさんで採択された。
脳波については、従来のものはタイムラグが大きかったので、運動準備電位を使うことにした。
プログラミングの問題でタイムラグはあまり小さく出来なかったけど、プログラムを改善させればタイムラグを小さく出来るはず。

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今回の発表の中で自分が一番驚いた発表。
やってることが普通に大学の研究室とかでやられていること。
実際、筋電位のシステムについては企業で採択とかもされてるみたいだし。
凄い。

そして、運動準備電位とかよく知ってるなぁ、と思った。
自分は前野先生の受動意識仮説の本でリベットの実験のことを読んでたから知ってたけど、普通は知らないよなぁ・・・

脳はなぜ「心」を作ったのか「私」の謎を解く受動意識仮説 (ちくま文庫)

脳はなぜ「心」を作ったのか「私」の謎を解く受動意識仮説 (ちくま文庫)

そして、今回はアウトプット側の話だったので、インプット側についても何か考えているのかを質問してみた。
今のところ考えてないようだけど、そういった研究があることは知っていたようなので、ぜひともインプット側についても考えてみて欲しいと思った。

というのは、『現れる存在』によれば、知覚→探究がサイクルとして回っていると指摘されているから。

現れる存在―脳と身体と世界の再統合

現れる存在―脳と身体と世界の再統合

われわれは、「瓶の感触」を得るのを受動的な感覚の働きと考えがちだが、これは断片的な知覚がさらなる探究を導くという、行為を含んだサイクルとして理解した方がいい。
この行為を含むサイクルが、瓶全体を知覚するという経験の基礎にある。
このラディカルな見解においては、接触は探索の道具としてあちらこちらに向けて放たれ、周囲の環境を何度となく探っている。
(『現れる存在』アンディ・クラーク 著、より引用)

アウトプットだけだと、実はアウトプットが迷子になってしまうことが考えられる。
インプットからのフィードバックによって次のアウトプットの方向性が定まり、そのループによる統合によって全体に知覚が及ぶ。
フルダイブのような仕組みを実現したいなら、このフィードバックについて考えるのは必須になってくると思う。

余談だけど、『現れる存在』はこれ以外にもいろいろ面白いことが書かれているので、ぜひとも読んで欲しいと思った。
身体性認知科学というジャンルになるっぽいのだけど、哲学、科学の混じり合う最先端なので、とても参考になると思う。

小野村さん、上念さん、石崎さん「ManageStock - 家庭向け在庫管理アプリ」

消耗品がなくなるのを防ぎたいので、簡単に在庫管理する仕組みを作った。
ドアセンサで箱の開閉をチェックするシステム、重量計でチェックするシステム、単にボタンだけのシステムをそれぞれ作ってみた。
それぞれ一長一短あったので、使い分けるとよさそう。
また、これをウェブアプリで管理するようにした。

***

ちょっとした仕組みだけど、これがあるだけでだいぶ便利そうだと思った。
以前、会社で消耗品(ノートとか付箋とか)持ち出すときに、ノートに誰が何個持っていったというのを記録するルールがあったのだけど(実質機能してなかった)、なんかそれを思い出してちょっと悲しくなった。
IoTやってますって言ってる会社がそれって、どうなんだろう・・・
評価ボードが行方不明になったりとかもあって、なんというか、ねぇ・・・中高生に負けてるよ・・・

高山さん「DetExploit - WindowsOSS脆弱性スキャナー」

アンチウィルスではなく、感染する原因をチェックして減らす仕組みを作った。
サーバからクライアントに指示を送ってスキャンを開始、情報を収集できるので、管理が簡単。
OSSで公開している。

***

話だけ聞くと、普通に企業が有料ソフト使ってやってることなのかなぁ、という感じ。
JP1とか、ウィルスバスター・コーポレートエディションとか。

割と不思議に思ったのが、どうしてこれをやろうと思ったのかなということ。
発表に使ってるPCはMacだったし(作ったシステムはWindows専用)、サーバ管理とかやる立場になることもないだろうし。

あと、入ってるソフトをチェックするためにレジストリを覗いたり外部と通信してそのデータを送ったりするのは、マルウェアの動きなので、下手すると他のアンチウィルスソフトに弾かれそうなのが気になった。
そうすると、ホワイトリストに入れてもらったりする必要があるんよね・・・

和泉田さん「Tea - 仮想経済シミュレーションプラットフォーム」

Discordというゲーム向けのチャットアプリを使って、経済シミュレーションゲームのプラットフォームを作った。
アイテムを生産したり加工して売り買いしたり出来る。
いろいろな拡張が考えられて、これをゲーム寄りにしていくのか、シミュレーション寄りにしていくのかは考え中。

***

ゲーム内での経済は自分も一時期興味を持っていたので、二つほど質問してみた。
一つは、経済では時間が重要な要素としてあるけど、それについてはどうなっているのか。
もう一つは、ゲーム内の経済はインフレしやすいように思うのだけど、それについては何か対策しているのか。

まず、一つ目については、アイテム生成に時間がかかるようになっているとのこと。
二つ目については、インフレしたらそれはそれで面白そうという回答w

一つ目の質問の背景を少し説明しておくと、強化学習で割引率というのを考える通り、経済だと「早く手に入る」ということの価値が重要だったりするから。
銀行の利子についても割引率から考えることが出来たりする。
あるいは、インフレによって貨幣価値が下がっていくという面もあったり。

以下の記事も参照:

二つ目については、メンターの方もコメントで補足していた通り、ゲーム内だと資産が減らないというのが大きい。

『21世紀の貨幣論』では、貨幣とは譲渡可能な債権であるという見方が示されている。

この考え方を使えば、流通しているお金の総量は社会に対する各個人の貸しの総量になっていて、生産すればするほど増え、消費されればされるほど減っていくことになる。
けど、ここで消費しても物自体がなくならないと、貸しが減らないことになる。
なので、どんどん貸しの量が増えていき、結果としてインフレが起こる。
(そして新規が入って来れなくなる)

なので、ゲゼルの唱えた「減価する貨幣」とかの実験がここで出来れば面白そうだなぁと思った。

松田さん「Mallet - 簡単なアプリを作れるモバイル端末用の開発環境」

スマホ/タブレットだけで簡単なアプリを作れるようにした。
ビジュアルプログラミング言語を使う。(テキスト編集も可能)
将来的にはマルチプラットフォームにする予定。

***

メンターの方が言うには、アプリを作れるようにするというから言語を作るのかと思ったら、言語はもう作ったのでそれを使えるプラットフォームを作るとのことで、もうこの時点で強い。
デモもやっていて、実際簡単に作れるようなので凄かった。

ただ、今やるならiOSネイティブで作らないでUnityを使うなりJavaScriptを使ったウェブアプリにしそうなもので、質問してみた。
まぁ、自分もSwift使いたくて(というかAndroid嫌いで)iOSネイティブアプリ作ったので、人のこと言えないのだけど(^^;

あまり明確な回答はもらえなかったのだけど、今やるなら絶対マルチプラットフォームにした方がいいと思う。
使えない人がいるというだけで価値が下がってしまうので。

平川さん「SmartVJ - 参加型の新しいメディアアート

スマホで映像や音を操ってみんなで作品を作るシステムを作った。
QRを読めば使えて、スマホを傾けたり回したりすることでエフェクターをかけたり出来る。

***

まさにIoTという感じで、IoTLTとかでも発表されそうな内容。
よく出来てるし、何よりオシャレでいいw
センスがあるw

竹内先生も質問してたけど、複数人でコラボしたときはいろいろ工夫が必要そうで、逆にそこにいろいろ可能性を感じた。
具体的なアルゴリズムは難しいけど、ハンドベルで一曲作るように、このシステムでみんなで協力して曲を作れても面白そう。

浅野さん「abecobe - シンプルかつ難しいパズルゲーム」

abecobeというスマホのパズルゲームを作った。
片方のキャラを動かすと反対のキャラは点対象の方向に動く。
それで両方をゴールに持っていく。
どうすればより面白くなるかを考えて、共感が重要だと思い、そこに注力した。

abecobe

abecobe

  • Atsushi Asano
  • ゲーム
  • 無料

***

質問タイムで、ダウンロードして実際に遊んで楽しかったと感想を伝えた人がたくさんいたw
自分も少し触ってみたけど、キャラが可愛いしパズルもなかなか面白い。

パッと浮かんだのがハイパーロボットだったので、時間制限による対戦とかは考えなかったのか質問してみた。
すると、対戦モードは試してみたけど、ゆったりプレイして欲しいかったのであえてなくしたとのこと。
作品に対する明確なポリシーを持ってて素晴らしい!

糸井さん「pirka - 会話を通して成長する人工知能技術」

話していると学習して自分に似てくるボット(人工無脳)を作った。
ユーザの言葉遣いを学習したり、単語に割り当てる感情のパラメータをユーザに合わせて学習するようにした。

***

まず思い浮かんだのは、『恋するプログラム Rubyでつくる人工無脳』。

でも、RubyではなくPythonを使っていたようなので、やっぱり時代はPythonなんだなぁとちょっと寂しくなった。

自然言語に興味があるということでそれに関した質問をしたい気持ちはあったけど、さすがにちょっと難しいので、pirka(ピリカ)という名前の由来を質問してみた。
これは、アイヌ語で「美しい」という意味とのこと。
エトピリカという鳥は美しいクチバシという意味なんだとか。

ちなみに、質問したかったのはソシュールレヴィ=ストロースは知っているのかなということ。
言語で単語をどう分けるかは恣意的で、文化による部分が大きかったりする。
(例えば日本語だと「水」と「お湯」という単語があるけど、英語だとどちらも「water」とか)
もし知らなかったら、ソシュール言語学構造主義の本は面白いので読んでみて欲しいと思った。

國武さん、森さん「VirtualPresents - VR空間をデザインする」

VR空間(VRChat)でWebサービスを提供するシステムを作った。
VR内でQRコードを見ると、そこからWebサービスと連携して画像をアップロード出来たりする。

***

VRについてはよく知らないけど、なんか凄いなという感じ。
VR内に発表会場も作ってたみたいだし。


と、めっちゃ長くなったけど、どの発表も面白かった。
あとで動画もアップロードされるようなので、興味のある人は見てみるといいと思う。

今日はここまで!