この時期毎年恒例になってきた未踏ジュニアの成果報告会。
今年も11/4(祝)に開催されていたので、行ってきてみた。
ちなみに採択されたプロジェクト一覧は以下で、発表の様子は動画で見ることもできる。
生成AIの使い方の変化
去年の感想で、生成AIの躍進がすごかったと書いた。
これは今年もそうで、多くのプロジェクトで生成AIを含めAI技術が使われている感じだった。
ただ、その使い方に関して、去年とはけっこう違う印象を受けた。
去年は生成AIを使うことで何かしらのアウトプットを直接得るようなプロジェクトが多かったと思う。 動画や四コマを作らせてみたり、情報をまとめたコンテンツを作らせてみたり。 この場合、アウトプットを生み出す主体はAIであり、人はむしろそれをサポートする側で、AIのアウトプットのための環境を整えることが開発といった感じがあった。 主客逆転というか。
それが今年は、アウトプットや活動の主体はあくまで人で、AIはそのサポートにすぎないという使われ方に変わっていたように感じた。
たとえばこのプロジェクト:
LLMで英単語学習の穴埋め問題を作るアプリを作ったというものなんだけど、もっと直接的に考えれば、LLMでそのまま翻訳してくれれば、そもそも英単語なんて覚えなくていいとなりそう(個人的にはそうなってくれたら楽なんだけど・・・)。 でも、そうではなく、学習するのはあくまで人で、AIはそのサポート、練習役となって、問題を出してくれるというところに留まっている。
次の4つのプロジェクトも同じようなところがあった:
それぞれ、発音を学び練習するためのアプリ、音声を使った英語学習のアプリ、作文の書き方をサポートしてくれるアプリ、独学でのプログラミング学習をサポートしてくれるアプリという感じなんだけど、いずれもAIは学びをサポートするためのツールとして使われているだけで、実際に手を動かして学習するのは人となっている。
そりゃ、AIに文章を読ませることもできるし(実際Text-to-Speechとか性能上がってる)、英語だってAIがやってくれれば楽、作文もAIが書いてくれれば立派な文章になって、プログラミングだってAIに任せてしまえば学ばなくたっていいのかもしれない。 けど、学習はまぁたしかに大変かもしれないけど、やっぱりできることが増えることの喜びとか、手を動かして何かを作り出す面白さというのはあって、なんでもかんでもAIに任せればいいってもんじゃないとも思う(まぁ現実的に任せきれないというのもあるけど)。
「作文おたすけアプリ」を作った高橋さんの発表から引用:
AIを使っていることで大人の人達からは「上手な作文を書いてくれるアプリがいいのでは?」と何度か言われてしまいました。
大人になると私もそんな風に思うかもしれませんが、子どもの私は「自分の力で作文を上手に書けるようになりたい!」「アイデアがわいて、上手に書けるとうれしい」という気持ちの方が大事でした。
これはとても素敵な姿勢だと思う。
理学寄りのプロジェクト
個人的には理学寄りのプロジェクトも興味深かった。
NP困難な最適化問題を解くために、量子アニーリングマシンが研究されてたりするけど、制約を目的関数にペナルティとして与えるのではなく、(おそらく)実行可能な近傍解をうまく作り出すことで、効率的に解を探索できるような量子アニーリングマシンのシミュレータを作ったという感じっぽい。
このあたりは量子コンピュータを使わない普通のヒューリスティクスのアプローチとかもあるので(量子コンピュータでなければうまい近傍解を作ろうとするのは自然で多くの研究があるはず)、実際問題どれくらいいいのかはなんとも言えないんだけど、こういうのに取り組んでること自体がすごいので今後に期待。
生物学に特化した形のシミュレーション開発アプリという感じで、生物に関する現象をグラフィカルなインタフェースで数理モデル(微分方程式)として表現し、それを解くことでシミュレーションを実施、研究を進めていける感じっぽい。 ぜんぜん知らない分野なので、そういった研究方法もあるんだというのが興味深かった。
まぁ、数理最適化を実務で使おうとしたとき、どうやって最適化問題に落とし込めばいいのか分からないというのをよく聞くので、同様に、生物の現象をどうやって数理モデルに落とし込めばいいのか分からないという声は出てきそうな気はした。 たぶん物理とかで現象を微分方程式として表現する経験とかあれば、似た感覚でできるんだろうけど。 そのあたりをサポートするコンテンツも今後用意されるといいのかなぁ。
今日はここまで!