この記事は技術同人誌・商業執筆 Advent Calendar 2021 - Adventarの4日目です。
昨日はさっぴー川原さんの2021年の技術同人活動を振り返る #技書博 #技術書典 - 人生100年!生涯エンジニア人生!でした。
明日はあおやぎさんの2021年の BLACK FTZ | トドの日記2.0です。
よし、技術同人誌を書こう!
と意気込んでついやってしまうのが、とんでもなく分厚い鈍器を生み出してしまうということ。
ページ数100ページ超えは当たり前。 場合によっては200ページオーバーしたり。 溢れ出んばかりのパッションの豪速球。 うん、気持ちはすごく分かる・・・
かく言う自分も一番最初に作った同人誌『Math Poker Girl』は172ページというなかなかの鈍器。 これは『数学ガール』みたいな本を作りたいという動機もあって、『数学ガール』ばりに分厚くしないといけないという強迫観念もあったから (『数学ガール』は300〜400ページくらいある)。
ただ、これは今から考えれば完全に失敗。 当時の自分に言ってやりたい。 「そんなに無茶してページ数増やすことないぞ。あと刷りすぎだぞ」って。
同人誌を書く立場としては、ついつい分厚い立派な本を書きたい、あるいは書かなくては、と思ってしまいがち。 でも、実際には薄い本の方がメリットが大きい。 だからそんなに意気込んで分厚い本を書く必要なんてなくて、力抜いて薄い本を書こうよというのがこの記事で言いたいこと。
読者の視点で考える
一つ重要なのが、読者の視点で考えること。
あなたは同人誌即売会に参加しました。 あれも面白そう、これも面白そうと、面白い本をいろいろ買い込んで帰宅。 一息ついて、さて、どれから読もうと考えたとき、薄い本と分厚い鈍器、どちらをまず読もうと思うか?
自分だったらとりあえず薄い本を手に取ってパラパラと読み始める。 薄い本ならサクッと読めるから。 これが分厚い本となると・・・
しかも、買った本が多くなればなるほど、分厚い本は手に取られにくくなる。 だって、分厚い本を1冊読むあいだに薄い本なら何冊も読むことができるわけだから。
『読まれるコンテンツの作り方』という同人誌の表紙にある「読まれなければないのと一緒ーー☆」という言葉が突き刺さる。
分厚い本は、分厚いというだけで、読まれなくなるリスクを抱え込むことになってしまう。 せっかく書いたのだから、ちゃんと読まれてほしいーーそう思うなら、分厚くしすぎない方がいい。
作者の視点でも
ちなみに、作者視点でも薄い本の方がメリットが多い。
まず、書くの圧倒的にが楽。
あれも書きたい、これも書きたいというなかで、書く内容を絞る必要は出てくるかもしれないけど、やっぱり書く量が少なければそれだけ楽なのは真実。 単純に執筆時間が短くて済むだけではなく、調べごとや校正の量が減るというのも大きい。 172ページを血眼でレビューして抜け漏れや誤植、表記揺れがないかをチェックするのはマジ苦行だった。。。
そして、リスクを下げられるというのもある。
このメリットはちょっと分かりにくいけど、たとえば書きたいことが4つあるときに、とりあえずそのうちの1つを書いてみる。 そして反応を見て、悪くなさそうだったら他のも1つずつ書いてみる。
そうすると、もし1つ目で反応が悪ければ、他の3つは書かなくてもいいやとできる。 つまり、読まれないものに労力やお金(印刷費)を割いてしまうというリスクを回避できたことになる。
あるいは、反応がよかったので他のも書いてみたとき、読者は自分の読みたいところだけピックして買うことができる。 これがもし全部入りの1冊だけだとしたら、読みたいところがちょこっとしかないからと買わないという機会損失のリスクを抱えることになる。
さらに、印刷しやすい。
実は、入稿の締切りはある一定の厚さを超えると早くなる。 なので、分厚い本の方が書く量は多いのに、締め切りは早くくるという不条理がある。。。 (場合によっては、分厚すぎると印刷してくれる印刷所がないなんて話も・・・)
それに分厚い方が印刷費も高くなるので、最初に払わないといけない金額も大きい。 当然、リターンに必要な冊数や金額も大きくなり、なかなかキツい・・・
そして、印刷された本は当然、物理的に重さがある。 分厚い本は重たいんだよ!!! 搬入とか搬出がホント大変。 『Math Poker Girl』の売れ残りを搬出するためにくっそ重たい段ボールを抱えて文化会館のフロアを移動したのはホントにツラかった。。。
そんなわけで、作るなら薄い本! 薄い本を作ろう!!!
ブログとの違い
ただ、そうなると一つ出てくる疑問が、「それならブログでもよくない?」ということ。
もちろんブログでもいいんだけど、そこはやっぱりちょっと違いがある。 それは何かというと、情報の量と質。
まず、ブログは検索して読まれることが多いので、あまりに長い記事はなかなか最後まで読んでもらえない。 なので、基本的には1,000〜2,000字くらいで、ピンポイントで役に立つ断片的な情報が書かれていることが多い (といいつつ、この記事はすでに2,300字超えてるけど・・・)。 読み物というよりかは、散らばったメモのイメージ。
一方、薄い本だと1ページで約1,000字書けるので、たとえば16ページくらいの本当に薄い本でもブログ記事にして8本分以上とかになるし、50ページとかになればそれはもうかなりの量となる。 それだけの量の情報が、検索の断片としてではなく、順序立った読み物として用意されているのが、薄い本の魅力といえる。
ということで、みんな薄い本を書こう!
今日はここまで!