いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

『世にも美しき数学者たちの日常』を読んでみた。

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『世にも美しき数学者たちの日常』が面白かったので紹介したい。

世にも美しき数学者たちの日常

世にも美しき数学者たちの日常

数学者ってどんな人なんだろう?

数学者といえば数学を研究している人のことだけど、そもそも数学を研究するってどういうことなのかというと、普通の人にはなかなかイメージがしづらい。
そこで、実際に数学者に会いに行ってみて、どんな人なのかや何が見えているのか、数学についてどう思っているかなどをインタビューしてまとめた本。

数学というと、普通の人が思い浮かべるのは受験数学だけど、そうではない世界があるということを分かりやすく伝えているのがよかった。

数学に「触る」

読んでいてとにかく思ったのは、数学に「触る」という感覚、これが他の読者にも伝わってほしいなということ。
数学的対象というのは目には見えないけど、確かにそこにあって、数学者はおもちゃをいじるようにその数学的対象に触っていじってる。
その辺りがこの本を読めば少し感じてもらえるんじゃないかなと思う。

「大人のための数学教室 和(なごみ)」の堀口先生へのインタビューが非常に共感を持てた。

「普通の人は問題の解法を学んで暗記して、その通りに解いていくわけです。 でも得意な人はそういった解き方はしない」
「どうやって解くんですか?」
「えっとね、たとえば適当な数字を放り込んでみたりする。 複雑な数式の問題が出てきたとしましょう。 そんなとき、得意な人は単純な方向に考えていきます。 なんか試していく、試しにやっていくんです。 いじってみて観察するんです。 そうしているうちに、数式がどういう振る舞いをするものなのか、だんだん分かってくる」

すごく分かるw
そう、とにかくいじってみる。
解けたとしても、他にも解き方があるんじゃないかなといろいろ探してみる。

数学の「自由さ」

千葉先生の数学の捉え方も共感が持てた。

「数学嫌いの理由として、答えががっちり決まっているのが嫌という人がいるじゃないですか。 それはね、数学じゃなくて受験数学なんですよ。 本当は数学ってものすごく自由なんです。 もう、何だって数学なんですよ」
「じゃあ数式とか、そういうのを考える以前に数学はあるんですね。 なぜ?と思った瞬間から、もう数学というか」
「そうです。 数式は音楽家が使う音符と同じものであって。 数学イコール数式というのは、全然違うんですよ。 数学を味わうのに、必ずしも数字や数式は必要ではない」

数学をやってる人だと、数学の自由さは知ってると思うんだけど、この辺りの自由さを普通の人は知らないと思う。
数学だと「今はこう考えるよ」とすれば、その前提の元でならどんな議論も許されてる。

これは津田先生のインタビューなんかでもそういう話が出てる:

「ちゃんと『私はこういう定義をします』と言えばいいんです。 その前提のもとで話をすれば、曖昧にはならない。 そういう自由さは数学の良いところだと思います。 はっきりしているけど、自由。 あと、やっぱり受験数学のためかよく誤解されているのは、証明が一つと思っている人がいるんです。 これも、いくらでもある。 人の数だけあっていい」

数学者と「問題」

あと、黒川先生や加藤先生のインタビューで書かれてた、数学者の問題に対する態度も普通の人には面白いと思う。

「問題を作る、というのはいいことだと思いますよ。 受け身で、誰かが作った問題を解かされる、というのはあまり楽しくないですよね。 お題を一つ二つ決めて、それで問題を作るというのをやってみると、だんだん面白くなるんじゃないかと思います。
作家で言うなら、タイトルだけ決めて小説を書くようなものでしょうか。 一般的には、『数学の問題は与えられるもの』という先入観が強いですよね? でも一番面白いのは、問題を作ることなんです」
数学は「これを解け!」の積み重ねではなかった。
「なぜ?」の積み重ねなのだ。

「数学で一番重要なことは、問題と一緒に生活することなんです」

数学って、自分でおもちゃを用意して、いじって遊び倒して、そこからまた新しいおもちゃを思いついて用意して、というのの繰り返しというか。
こう、数学に「触る」というのが根っこにある。
そういうのが少しでも伝わればな、と思う。


他にも面白かった内容として、次のような発言があった:

「しかもどのレベルの人も『難しい』って言ってると思います。 みんなそれぞれのレベルで『難しい』し『数学わからない』と思ってるはずです。 『数学わかる』って人がいたら、その人はたぶんわかってないと思いますね」

めっちゃ分かるw
これは『数学ガール』の結城先生の言う「わからなくなる最前線」で試行錯誤してるからだと思う。
その最前線でやる数学が一番難しく、そして面白いw

ちなみに、『数学ガール』は「例示は理解の試金石」という言葉の通り、実際にいくつかの例を試して理解を深めているので、数学に「触れてる」様子が書かれている。
なので、この本で数学に「触れる」ことに興味を持ったら、『数学ガール』シリーズ(もしくは『数学ガールの秘密ノート』シリーズ)もオススメ。

そのときはパラパラと読み進めるんじゃなくて、実際に鉛筆と紙を使い、手を動かしながら数学に「触って」読むといいと思う。

今日はここまで!

世にも美しき数学者たちの日常

世にも美しき数学者たちの日常

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

  • 作者:結城 浩
  • 発売日: 2007/06/27
  • メディア: 単行本