久々にポーカー(テキサスホールデム)をやって面白かったので、昔考えたことを。
サンクコストを考慮してはならない
テキサスホールデムに関する理論を見ていると出てくるのが、「サンクコストを考慮してはならない」という話。
テキサスホールデムでは、ベットするタイミングが何回も回ってくることになる。
そうなると、「さっきこれだけベットしたんだから、もう後には引けない・・・」という状況がよくある。
これを諌めるのが、「サンクコストを考慮してはならない」という言葉。
つまり、これまでにいくらチップをつぎ込んできたのかは考えずに、今現在、どれだけ勝てる見込みがあるのかだけを考えろ、と。
これは「コンコルド効果」ーーもうどうやっても失敗すると分かっていても、これまでに注ぎ込んだ資産を諦めることが出来ずに、さらに損失を増やしてしまうことーーを防ぐための言葉とも言えるけど、自分にはどうにも納得がいかなかった。
というのも、その根拠がちゃんと数式で示されていないから。
例えば、『トーナメントポーカー入門 テキサスホールデムの基礎理論』には、次のようにしか書かれていない:
既にポットに入れてしまったチップについては、既に投資したコストであり、勝負から撤退しても取り戻すことのできない、勝負に勝つ以外取り戻すことのできないコストとなっています。このようなコストのことを「サンクコスト(埋没費用)」といい、サンクコストについては、既に入ってしまった投資でありコストとして確定してしまっているため、現在の意思決定の合理性を判断する際に考慮してはならない要素とされます。
あるいは、ネットを見てみると、以下のような記述も。
サンクコストという言葉は実は半年前に知ったのですが、それはポーカーでは当たり前の話なんですよね。もちろん、感情的になって今までおカネ出してきたんだし、と判断がブレてしまうプレーヤーも少なくないですが。
これではただの精神論が語られているようにしか見えない。
そうであるならば、もちろん多くの場合には有益な言葉かもしれないけど、場合によってはそれが当てはまらないという可能性だって出てくる。
数式で簡単に示せるのなら示せばいいのに、その数式が出てこないとなると、ますます怪しく感じる。
期待値の計算
結論から言えば、「サンクコストを考慮してはいけない」というのは正しい。
もう少し厳密に言うと、「サンクコストを考慮してもいいけど、結果はサンクコストを考慮しないときと同じになる」。
そして、サンクコストを考慮に入れない方が計算が簡単なので、サンクコストを考慮に入れない方がいい、となる。
これは数学的にちゃんと示すことが出来る。
次のような簡単な例で考えてみる:
ターンまでに、自分は ドル投資しているとする。
つまり、サンクコストは ドル。
そして、リバーで相手が ドルベットしてきて、それにコールすべきかどうか。
勝てる確率は 。
勝てば合計で ドル獲得できる。
このとき、
- もし、コールするなら、利益の期待値は ドル
- コールしないなら、利益の期待値は ドル
よって、コールすべきかどうかは、期待値を比較して、
- なら、コールすべき
- なら、降りるべき
となる。
ところで、この両辺には、どちらもサンクコストである ドルという項が出てきている。
そこで、この判断は次のように簡単にすることが出来る:
- なら、コールすべき
- なら、降りるべき
つまり、サンクコストを考慮に入れることなく、現在のオッズのみから判断を下せることになる。
結局、サンクコストというのは、判断を行うときの両辺に現れてくるので、打ち消しあってしまい、現在の判断には影響を与えないことになる。
なので、現在の判断には考慮に入れず、現在のオッズからのみ判断を下すべきだ、となる。
これくらい簡単に数学的に示せるのだから、本とかでもチャチャっと示してくれればいいのにね。
今日はここまで!