いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

ポーカーのオッズとアウツの話。(その1)

ポーカー(テキサスホールデム)の理論的な話でよく出るのが、オッズとアウツの話。
それ自体は別に問題ないと思うのだけど、自分には納得いかない部分があったので、その話を。

ただ、そもそもオッズとアウツの話が分かっていないとよく分からないと思うので、まずはオッズの基本的な話から。

サイコロの賭け

オッズの話をするために、まずはサイコロを使った賭けを考えてみる。
考えるのは、次のような賭け:

参加費は50円。
サイコロを振って4以上が出れば、100円がもらえて参加費も返ってくる。
ただし、3以下が出た場合、参加費の50円は没収されてしまう。

さて、この賭けに乗るべきか否か?

数学的に考えると、これは当然、乗るべき。
というのも、

  • 賭けに勝つ確率は50%で、その場合の儲けは100円
  • 賭けに負ける確率は50%で、その場合の儲けは-50円

なので、賭けに乗った場合の儲けの期待値は、

 100 \times 0.5 + (-50) \times 0.5 = 25

となり、プラスの儲けが期待できるから。

このように、儲けの期待値を計算して、儲けの期待値がプラスになれば賭けに乗ればいいし、そうでなければ乗らない方がいいとなる。
基本的には。
(※イカサマとかなければ、ね)

「ポットオッズ」と「オッズ」

ただ、毎回このように期待値を計算すると大変なので、もう少し簡単に計算する方法がある。
そのときに使うのが、「ポットオッズ」と「オッズ」。

「ポットオッズ」とは、次の比のこと:

 (\mbox{賞金額}) : (\mbox{参加費})

そして、「オッズ」とは、次の比のこと:

 (\mbox{負ける事象数}) : (\mbox{勝つ事象数})

そして、 \bf{ (\mbox{ポットオッズ}) \gt (\mbox{オッズ}) } であれば、賭けに乗るべきとなる。
(なお、比較しやすいように、普通は右の項が1になるように揃える)

なぜ  (\mbox{ポットオッズ}) \gt (\mbox{オッズ}) なら賭けに乗るべきなのかは後で説明するとして、とりあえずはさっきの例で確認してみる:

まず、ポットオッズは

  (\mbox{賞金額}) : (\mbox{参加費}) = 100 : 50 = 2 : 1

一方、オッズは

 (\mbox{負ける事象数}) : (\mbox{勝つ事象数}) = 3 : 3 = 1 : 1

となり、確かに  (\mbox{ポットオッズ}) \gt (\mbox{オッズ}) となってる。

別の例でも確認してみる:

今度は、参加費は20円で、サイコロを振って6が出たら100円がもらえて参加費も返ってきて、それ以外だと参加費が没収されるとする。

この場合、儲けの期待値は

 100 \times \frac16 + (-20) \times \frac56 = 0

なので、トントンといったところ。

これをポットオッズとオッズで計算してみると、

 (\mbox{ポットオッズ}) = 100 : 20 = 5 : 1
 (\mbox{オッズ}) = 5 : 1

となり、確かにトントンになっている。

またさらに別の例で、参加費は60円で、サイコロを振って5以上が出たら100円が貰えて参加費も返ってきて、4以下が出たら参加費が回収されるとする。

この場合、儲けの期待値は

 100 \times \frac13 + (-60) \times \frac23 = - \frac{20}{3}

なので、賭けに乗るべきではない。

ポットオッズとオッズで計算してみても、

 (\mbox{ポットオッズ}) = 100 : 60 = 1.66 \ldots : 1
 (\mbox{オッズ}) = 4 : 2 = 2 : 1

であり、 (\mbox{ポットオッズ}) \lt (\mbox{オッズ}) なので、確かに賭けに乗るべきでないとなっている。

直感的な説明

さて、では、なぜ  (\mbox{ポットオッズ}) \gt (\mbox{オッズ}) なら賭けに乗るべきなのかを、直感的に説明してみる。

比較のために、ポットオッズ、オッズの右項は1にすることにする:

 (\mbox{ポットオッズ}) = a : 1
 (\mbox{オッズ}) = b : 1

このとき、それぞれの左項の  a b が何を意味するのかを考えてみる。

まず、 b というのは、1回勝つのに対して、何回負けるのかという回数を意味する。
そして、 a というのは、1回負けたときに払う参加費を1とした場合に、勝ったときの儲けがいくらなのかを意味している。

すると、1回負けたときに払う参加費を1とすれば、1回勝つのに対して  b 回負けるわけだから、負けて払う参加費の総額は  b となる。
一方、1回勝ったときの儲けは a
なので、 a \gt b であれば、「勝ったときの儲け」が「負けて払う参加費の総額」より大きくなるので、賭けに乗るべきとなる。

数式を用いた説明

同じことを、数式でも説明してみる。

ポットオッズを  a : 1、オッズを  b : 1 としたとき、勝ったときの儲けは  a、負けたときの儲けは-1、勝つ確率は  \frac{1}{1+b}、負ける確率は  \frac{b}{1+b} となる。

この期待値を計算すると、

 a \times \frac{1}{1+b} + (-1) \times \frac{b}{1+b} = \frac{a-b}{1+b}

これがプラスであれば賭けに乗るべきなわけだから、 a \gt b、すなわち、 (\mbox{ポットオッズ}) \gt (\mbox{オッズ}) ならば賭けに乗るべき、となる。

今日はここまで!