飲茶さんの新刊、『正義の教室』を読んでみたので、その感想とか。
- 作者: 飲茶
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/06/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「正義」って何だろう?
この本でまず驚いたのが、小説だということ。
哲学の入門書なので、飲茶さんがこれまで出してきたような解説本を想像していたのだけど、いざ読み始めてみたら、なんと小説。
しかも、本題に入るための小噺だけ物語になってるとかではなくて、哲学の説明まで含めて、すべて登場人物たちによって語られ、描かれている。
これにはホント驚かされた。
しかも、物語が普通に面白いw
飲茶さん、多才だなぁ・・・
そんな、小説を通して語られ、説明されているテーマが、「正義」。
「正義」って何なんだろうね、ということ。
これに関して、本書では「正義には3つの判断基準がある」としている。
すなわち、
という3つの立場を挙げ、それぞれについて説明し、また、問題点の指摘も行っている。
これらの説明はさすが飲茶さんで、とても分かりやすい。
それに、それぞれの立場を体現したヒロインたちを登場させてストーリーを展開しているので、面白く読み進められるし、共感もしやすい。
ぜひとも実際に本を手にとって読んでもらいたいところ。
・・・が、ぶっちゃけ、そんなのどうでもいいんだよ!
というのが、この本を最高にファンキーにして、めちゃくちゃ面白くしている部分w
そう、哲学書に教養を求める人ならば、功利主義だとか自由主義だとか、そういった知識を得ることが重要になるんだろうけど、じゃあ、そういった知識を得たからといって、何になるんだ、と。
「トロッコ問題」のような理不尽な状況に実際に置かれてしまったとしたら、そういった知識がなんか役に立つのか?
クソの役にも立たないだろ!!!
実際、飲茶さんは本書を書いた動機として、以下のようなツイートをしている:
新刊の帯について、同じ哲学サロンのオーナー「原田まりる」さんから問われたので。
— 飲茶「史上最強の哲学入門」 (@yamcha789) 2019年6月25日
倫理学の本を読むたび、毎回こんな気持ちになったのが書いた動機。#正義の教室 pic.twitter.com/ebkrNzKolX
めっちゃ分かるw
理不尽でしかないもんね。
物語内では、この理不尽さにヒロインの一人が苦しめられたり。
そして、本書で説明されている3つの立場も、それぞれ問題点が指摘され、ことごとく論破されている。
じゃあ、「正義」なんてものはないのか・・・?
いや、「正義」はあるよ!!!
そう強く主張しているのが、本書。
トロッコ問題という状況で、どんな「行動」が正義と思えるかではなく、どんな「人間」が正義だと思えるか。
(中略)
人間は、完全な正義を直観できないし、知りようもない。
それはどうしようもない現実だ。
でも、そんな何が正しいかもわからない世界の中でも、それでも「正しくありたい」と願い、自分の正しさに不安を覚えながらも「善いこと」を目指して生きていくことはできる。
きっと僕たちにはそれで十分でーーむしろ、それこそが人間にとって唯一可能な正義なんじゃないだろうか。
(『正義の教室』より引用)
つまり、大切なのは「内容」ではなく、「在り方」だということ。
結局のところ、功利主義も自由主義も直観主義も、「これが正義である」という「内容」に関する立場の違いでしかない。
なので、そんなのは「どうでもいい」となる。
そうではなく、「自分はどうやって生きていくのか」という「在り方」こそが重要というわけだ。
そんな主人公の最後の演説シーンで語られる内容は、まさにニーチェの「超人」を体現するようなものになっていて、とてもよかった。
そして、衝撃のラストw
いやまぁ、途中で予想はついたんだけど、まさかホントにこれをやるとはw
『史上最強の哲学入門』の東洋編で、頭で分かってるだけじゃダメで、リアルな体験をもって理解しないといけない、と書かれている通りなんだけどw
今日はここまで!
- 作者: 飲茶
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/06/20
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