これについては詳細を調べてないので、自分の意見を言うつもりはないんだけど、ツイッターを見ていて気になった呟きがあったので、それについて考えてみた。
気になった呟きというのは、これ。
真の民主主義を投票で実現するなら、なんでも白黒つけるんじゃ無くて獲得した割合だけの権限を全ての候補に与えるべきなんじゃなかろうか。50%ならお互いに譲歩した目標を立てるとかさ
— ricksong (@ricksong) 2015年5月17日
ハッとさせられる意見だけど、実際のところどうなのかなと思って、ちょっと考えてみた。
具体例から考える
まずは、具体的な例を挙げて考えるのがよさそう。
ここで取り扱うのは、次のような問題。
ある問題Pに関して、A案とB案が提案された。 この案はそれぞれ独立して実行可能だが、予算は限られているので、 Xa: A案の実施率(単位は%) Xb: B案の実施率(単位は%) としたときに、 Xa + Xb ≦ 100 でなければならないとする。 投票を行った結果、 Ca: A案の賛成率(単位は%) Cb: B案の賛成率(単位は%) であった。(ただし、Ca + Cb = 100) さて、この場合、XaおよびXbはどうあるべきか?
ケース1、(Ca, Cb) = (80, 20)の場合
提案された意見に従うなら、(Xa, Xb) = (80, 20)となる。
このとき、人々の満足度を計算してみると、A案に投票した人の満足度は80%、B案に投票した人の満足度は20%であるから、人口全体としての満足度は、
(0.8 * 0.8 + 0.2 * 0.2) * 100 = 68 [%]
となる。
一方、従来通りの多数決なら、(Xa, Xb) = (100, 0)となるわけだけど、このときの人口全体の満足度は、
(0.8 * 1 + 0.2 * 0) * 100 = 80 [%]
となる。
人口全体の満足度という観点で見ると、従来通りの方がよさそう・・・?
ケース2、(Ca, Cb) = (60, 40)の場合
ケース1のときと同様に計算してみる。
まず、人口全体としての満足度は、(Xa, Xb) = (60, 40)なら、
(0.6 * 0.6 + 0.4 * 0.4) * 100 = 52 [%]
(Xa, Xb) = (100, 0)なら、
(0.6 * 1 + 0.4 * 0) * 100 = 60 [%]
だいぶ差は縮まってるけど、やはり従来通りの方が上。
ケース3、(Ca, Cb) = (50, 50)の場合
同様に、(Xa, Xb) = (50, 50)なら、
(0.5 * 0.5 + 0.5 * 0.5) * 100 = 50 [%]
(Xa, Xb) = (100, 0)なら、
(0.5 * 1 + 0.5 * 0) * 100 = 50 [%]
ここで等価に。
数学的な分析
数学的に分析すると、これは次のような最適化問題になってる:
(Ca, Cb)が入力として与えられるとして、
この(Ca, Cb)の割合が変わったときに、最適化(Xa, Xb)がどのように変わっていくのか、というわけだ。
重要なのは、これは線形計画問題になっているということ。
したがって、最適解は常に頂点に存在するので、(Xa, Xb) = (100, 0), (0, 100), (0, 0)のいずれかが最適解(の1つ)となっている。
このことから、最適解は
と、すぐに分かる。
(ただし、Ca = Cb = 50の場合、Xa + Xb = 100を満たせば、最適解となる)
このことから、功利主義的に、人口全体の満足度を最大にすることを考えた場合、従来の方法の方が常に「妥当」となりそう。
とはいえ・・・
「それなら、少数派は常に切り捨てられていいのか!」というのも、もっともな意見。
別な視点の分析が必要なのかも・・・
今日はここまで!