いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

多数決の「妥当な解決策」について考えてみた。(その1)

大阪で、「大阪都構想」の是非を問う住民投票があったみたい。

これについては詳細を調べてないので、自分の意見を言うつもりはないんだけど、ツイッターを見ていて気になった呟きがあったので、それについて考えてみた。

気になった呟きというのは、これ。

ハッとさせられる意見だけど、実際のところどうなのかなと思って、ちょっと考えてみた。

具体例から考える

まずは、具体的な例を挙げて考えるのがよさそう。

ここで取り扱うのは、次のような問題。

ある問題Pに関して、A案とB案が提案された。

この案はそれぞれ独立して実行可能だが、予算は限られているので、
 Xa: A案の実施率(単位は%)
 Xb: B案の実施率(単位は%)
としたときに、
 Xa + Xb ≦ 100
でなければならないとする。

投票を行った結果、
 Ca: A案の賛成率(単位は%)
 Cb: B案の賛成率(単位は%)
であった。(ただし、Ca + Cb = 100)

さて、この場合、XaおよびXbはどうあるべきか?

ケース1、(Ca, Cb) = (80, 20)の場合

提案された意見に従うなら、(Xa, Xb) = (80, 20)となる。

このとき、人々の満足度を計算してみると、A案に投票した人の満足度は80%、B案に投票した人の満足度は20%であるから、人口全体としての満足度は、

(0.8 * 0.8 + 0.2 * 0.2) * 100 = 68 [%]

となる。

一方、従来通りの多数決なら、(Xa, Xb) = (100, 0)となるわけだけど、このときの人口全体の満足度は、

(0.8 * 1 + 0.2 * 0) * 100 = 80 [%]

となる。

人口全体の満足度という観点で見ると、従来通りの方がよさそう・・・?

ケース2、(Ca, Cb) = (60, 40)の場合

ケース1のときと同様に計算してみる。

まず、人口全体としての満足度は、(Xa, Xb) = (60, 40)なら、

(0.6 * 0.6 + 0.4 * 0.4) * 100 = 52 [%]

(Xa, Xb) = (100, 0)なら、

(0.6 * 1 + 0.4 * 0) * 100 = 60 [%]

だいぶ差は縮まってるけど、やはり従来通りの方が上。

ケース3、(Ca, Cb) = (50, 50)の場合

同様に、(Xa, Xb) = (50, 50)なら、

(0.5 * 0.5 + 0.5 * 0.5) * 100 = 50 [%]

(Xa, Xb) = (100, 0)なら、

(0.5 * 1 + 0.5 * 0) * 100 = 50 [%]

ここで等価に。

数学的な分析

数学的に分析すると、これは次のような最適化問題になってる:

(Ca, Cb)が入力として与えられるとして、

 {
\mbox{max.} \; C_a X_a + C_b X_b \\
\mbox{subject. to} \\
\; \; \; \; \; \; \; \; \; X_a + X_b \le 100 \\
\; \; \; \; \; \; \; \; \; X_a \ge 0 \\
\; \; \; \; \; \; \; \; \; X_b \ge 0
}

この(Ca, Cb)の割合が変わったときに、最適化(Xa, Xb)がどのように変わっていくのか、というわけだ。

重要なのは、これは線形計画問題になっているということ。
したがって、最適解は常に頂点に存在するので、(Xa, Xb) = (100, 0), (0, 100), (0, 0)のいずれかが最適解(の1つ)となっている。

このことから、最適解は

 {
(X_a, X_b) = \left\{\begin{align}
(100, 0) \; \mbox{if} \; C_a \ge C_b \\
(0, 100) \; \mbox{if} \; C_a \le C_b \\
\end{align}\right.
}

と、すぐに分かる。
(ただし、Ca = Cb = 50の場合、Xa + Xb = 100を満たせば、最適解となる)

このことから、功利主義的に、人口全体の満足度を最大にすることを考えた場合、従来の方法の方が常に「妥当」となりそう。

とはいえ・・・

「それなら、少数派は常に切り捨てられていいのか!」というのも、もっともな意見。
別な視点の分析が必要なのかも・・・

今日はここまで!