いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

「ネガティブ投票」という投票方式を考えてみた。

昨日は多数決について考えた。

それに関連して、昔考えた「ネガティブ投票」というのを紹介してみたい。

ネガティブ投票って?

普通の選挙の投票は、「この人を当選させたい」というポジティブなものになっている。
これに対して、自分の考えた「ネガティブ投票」というのは、逆に「この人は当選させたくない」ということを表明する投票方式。
立候補した候補者のリストに対して、「この人は当選させたくない」という場合、チェックを入れる(複数の人にチェックを入れることも可)。
さらに、もうちょっと工夫を加える(これについては後述)。

Wikipediaを見てみると、disapproval votingというのが自分の考えた仕組みに近い。
最高裁判所の裁判官に対する国民審査もこの方式。

現行の投票の問題点

まず、そもそも自分がなぜこの方式を考えたのかというと、選挙に行かない理由として、次のような理由がよく挙げられるから。

  • どの候補者も適切だと思えないけど、かといって、その中でまだマシな候補者を選ぼうとなると、大変。
  • 「白票を投じる」もしくは「投票しない」ということで、政治に対する不信感を示したい。

つまり、現行の投票方式の場合、「政治に対する不信感」を表明する方法が存在しないという問題がある。
ここで、だからといって「白票を投じる」や「投票しない」という行動をとったとしても、それは単に無視されるだけで、意味を持たない。

そして、「全員不適切だと思うけど、その中でもこの人ならまだマシ」という消極的な投票を行う場合も、候補者全員の中でまだ誰がマシなのか、ということを比較検討するとなると、これはかなり大変。
というのも、各候補者がダメだと思う理由を比較していって、その中でまだ自分が許容出来るものは何なのかを考えていかないといけないから。
そんな面倒なことを考えるくらいなら、いっそ白票のまま出した方がマシだと思ってしまったとしても、仕方ないとしか言いようがない。

ネガティブ投票の詳細

さて、自分の考えた「ネガティブ投票」の仕組みでは、disapproval votingの仕組みに加えて、2つの工夫を追加する。
それは、無投票の扱い方と、足切りシステム。

具体的には、以下のようにする:

まず、投票用紙には、候補者の名前の一覧とチェックボックスが書かれている。
(国民審査の投票用紙を思い浮かべるといい)
そして、「この候補者は当選させたくない」という場合、チェックボックスに×を記入する。
なお、複数チェックボックスに×を書いてもいいし、なんなら全部×にしてもいい。
逆に、1つも×をつけなくてもOK。

無投票の場合、それは1つも×をつけなかったのと同じ扱いになる。

そして、足切りシステム。
ある一定数以上×をつけられた候補者は、問答無用で落選とする。
これによって、たとえ×をつけられた数が一番少なくても、足切りされていたら落選。

つまり、この投票システムでは、不信任の数が増えれば増えるほど、議員の席の数自体が減るという仕組みを持つようになる。

こうして足切りを行った上で、より×の少なかった候補者から当選していく、という方式。

これによって、「政治に対する不信感」を表明し、そしてそれを政治家への報酬としてフィードバック出来るようにする。

ネガティブ投票のメリット

政治に対する不信感を表明できるようになるというメリットだけでなく、ネガティブ投票には次のようなメリットも生まれる:

まず、投票に対するコストが下がる。(これはdisapproval votingの持つ性質)

どういうことかというと、現行の投票方式の場合、比較検討を行う必要があるので、これは前述の通り大変。
けど、ネガティブ投票(やdisapproval voting)の場合、それぞれの候補者の主張だけを見て×をつけるかどうかの判断を行えばいいので、候補者の比較を行う必要がなく、判断が容易になる。

ちなみに、「判断しようにも、全然情報が出てなくて、分からないよ」というのなら、単に×をつければいい。
だって、それは説明責任を果たしていないということなのだから。
そういう意味でも判断のコストは低くなるし、政治家もそういった判断をされないために情報を分かりやすく出してくるようになると予想されるので、そのことも判断の容易さに繋がってくる。

それと、投票率の向上も見込まれると思っている。

人は、何も問題がないのなら余計な行動はしたくなく、何か問題があるなら、その問題を解決するために行動したくなるもの。
けど、現状では、問題があるとは思っていても、それを解決するための行動を起こすことが出来ない、ということが、投票率の低下に繋がっていると考えられる。

ここで、ネガティブ投票では「無投票の場合、1つも×をつけなかったのと同じ扱いになる」としているので、

  • 政治に何も問題がないなら、無投票であったとしても特に問題ない(それでもあえて特定の候補者を応援したいなら、投票を行う)
  • 政治に何か問題があるのなら、投票することでその意図を示す

となって、投票をすることがその問題を解決することに直接繋がってくる。
なので、投票率の向上に繋がると考えられる。
(もちろん、政治に何も問題がないなら、逆に投票率が下がる可能性もあるけど、今度は逆に「政治がちゃんと機能している」ことによる信頼から、一定の投票率は維持されると思っている)

あと、政治家に使われる税金の量が、政治家の働きっぷりに応じて変化する、というのも大きなメリット。

これは民間企業であれば当然で、働きが悪ければ報酬が低くなるのは当たり前のこと。
けど、議員数が一定なら、働きが良かろうが悪かろうが、常に一定の税金が使われることになる。
これはおかしなことだ。

けど、ネガティブ投票の仕組みなら、政治家の働きが悪いと評価されれば議員の数自体が減ることになるので、政治家に使われる税金の量も減ることになる。
国民からの政治に対する評価が、政治家への報酬の量へと反映されることになる。
そうなると、政治家も報酬の量を減らされないようにするために、しっかりと働き、そして国民にアピールする必要が出てくる。

なお、この投票方式は、昨日の「票数に『寿命の残り』の期待値(に正の相関をする値)の重みをつける」方法と直交しているので、いずれかだけ採用することも、両方採用することも、矛盾なく行うことが出来る。
これもメリットの一つ。

ポジティブとネガティブの非対称性

なお、全く対称に写しかえた「ポジティブ投票」という仕組みを考えることが出来るようにも思う。

具体的には、

  • 候補者のリストとチェックボックスを用意し、「投票させてもいい」と思う候補者に○をつける(複数可)
  • 無投票の場合、1つも○をつけなかったという扱い
  • ○の数が一定数なければ、足切り

という仕組み。

これは一見、ネガティブ投票と同じように働くように思うけど、実際には微妙に非対称性が存在して、ネガティブ投票ほどには上手くいかないと思っている。

というのも、人はダメ出しをする方が簡単だから。
「この候補者はダメ」というのは、1つでも致命的な問題があれば言えるけど、「この候補者は大丈夫」というのは、1つも問題がない(あるいは、あったとしても許容できるものに限る)ということを確認してからでないと言えない。

もちろん、ポジティブ投票の場合であったとしても、その場合、ダメだと判断された候補者には何も印をつけないで、それ以外の候補者に○をつけるようにすれば、判断のコストは全く等価になっているんだけど、○をつけるというのは「何かプラスの要素があるから」という心理が働くので、そこには微妙な差が生じてくる。

また、投票率に関しても、ネガティブ選挙のときとは逆に

  • 政治に何も問題がないなら、投票することでその意図を示す
  • 政治に何か問題があるなら、無投票であったとしても問題ない(それでもあえて特定の候補者を否定したいなら、投票を行う)

となるわけだけど、何も問題がないのに行動を起こさないといけないというのは、心理的なコストが高い。
何も問題がないのなら余計な行動をする必要はなく、何か問題があるときには行動をするとした方が、行動に必要性が生じるので動きやすいし、「実際に行動をして問題を解決しようとした」という達成感も得られる。

以上のことから、ネガティブ投票の方が効果的に働くと思われる。

考えられる問題点

ただし、当然問題も考えられる。

まず考えられる問題点としては、候補者同士のディスり合いになるんじゃないか、ということ。
「他の候補者はこういうところがダメですよ」と喧伝すれば、他の候補者に×がつけられることになり、それにより、自分の当選する確率が高まるだろう、と政治家が考えれば、こういうことも起きそうなところ。

けど、それは結局お互いに足を引っ張り合うという結果になるので、全員が等しく×をくらうことになる。
他の候補者をディスったって、それが自分に×を投票されないようにするという行動にはならない。

この投票方式の場合、当選に必要なのは、他の候補者の×をいかに増やすかではなく、自分の×をいかに減らすか、ということになる。
そのことにちゃんと気付けるくらいに政治家が賢いのであれば、ディスり合いは生じないと思われる。
(もし、そんなことにも気付けないくらいに愚かしいのであれば、等しく×を投票されればいい。そんな政治家はごめんだ)

他にも、無投票が信任に繋がるので、有権者を投票所に行かせないように妨害工作をしてくるなんていう輩が出てくる可能性も考えられる。
けど、それは普通に取り締まればいいだけのこと。
現行の選挙だってそんなことをする輩が出る可能性はあるけど、出たら取り締まればいいだけなのだから。

今日はここまで!