いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

OR学会の2025年秋季大会に行ってきた。

だいぶ時間が経ってしまったけど、9/10(水)〜9/12(金)でOR学会の2025年秋季シンポジウムと研究発表会があって、いろいろ話を聞いてきたので、感想とか。

シンポジウム

初日はシンポジウムで、関東から広島まで新幹線で移動して、そこからさらに電車で広島大学に行く予定だったんだけど、ここで思わぬトラブルが。 なんと大雨の影響で山陽本線が運休になり、広島から西条に行けない事態に。 しかたないので新幹線で東広島に向かったんだけど、ここでも信号機故障で遅延が発生。 新幹線に2時間強閉じ込められた。

そんなこんなでかなり遅れて広島大学に到着。 一応、シンポジウム側でも発表順を変えたり時間を後ろにズラしてたんだけど、半分の発表しか聞けなかった。

で、肝心の発表はというと、個人的にはそんなに刺さらなかったかなぁ。 大学発ベンチャーの話が聞きたかったんだけど、聞けなかったのが残念(動画が出るはずだけどまだ見れてない)。

特別講演

今回の特別講演は酪農や農業の話だった。

  • デジタル技術で変わる乳牛管理:異分野連携による酪農実装モデル
  • IoP技術を活用した農業課題への数理最適化アプローチ

普段なかなか聞けない話だから、面白かったなぁ。 知らない業界の話を聞けるのっていいよね。

EV活用に関する発表

自分の仕事に関連するので積極的に聞きにいったところもあるけど、EV活用に関する発表がだいぶ増えた印象。

次のような発表があった:

  • 時間窓および非線形放充電を考慮した電気自動車の配送計画問題
    • EVトラックでの配送計画
    • 以下のようなものを考慮に入れた:
      • 顧客が受け取れる時間の幅が決まっている(時間窓の設定)
      • 充電でSoCが高くなると効率が悪くなる(非線形
      • 放電で積載量が増えると効率が悪くなる(線形)
    • ヒューリスティクスで近似解を求めた
  • 消費電力と所要時間の不確実性を考慮した電動バスの運行計画最適化
    • EVバスの運行計画を作る
    • 電欠や遅延を回避するようにする
    • ロバスト最適化だと保守的だし、確率計画だと大規模になったときに大変
    • 複数シナリオを用意して不確実性を表現し、整数計画として定式化して解いた
  • BEVにおける交換式電池の割当や充放電計画作成の最適化
    • EVトラックで、手動交換可能な小型バッテリーをいくつか積んだものを考える
    • バッテリーの割当や充放電計画をどうすればいいか
    • 割当問題と充放電計画を交互に解いていく改善していくアプローチ
  • 充電の先着順制約を考慮したEVトラックの経路充電計画立案手法
    • 長距離輸送のEVトラックで、専用の充電スポットがいくつかあるような場合の充電計画
    • 先着トラックが優先的に充電できるように考慮した
    • 整数計画でまず荒く解いて、シミュレーションで細かい制約を満たすように調整

それぞれの発表で解こうとしている問題がけっこう違うのが面白いところ。

あと、質問の中では全固体電池とかどうなの?みたいなのもあったり。 それについては(企業秘密で)答えられないとかもあったので、現場の研究はもっと先のことをやってるんだろうなぁとも思った。 自分のところでも発表できない内容あるしなぁ。

分布的ロバスト最適化

今回、個人的にかなり気になったのは分布的ロバスト最適化。

「不確実性下の配電系統における分散型エネルギー資源制御に対するデータ駆動型分布的ロバスト最適化」という発表があって、これ自体は再エネの不確実性に対処するための制御をしようというものなんだけど、分布的ロバスト最適化というのを知らなかったので、そういうのもあるんだと感心した。

不確実性に対処する方法として、ロバスト最適化や確率計画があるわけだけど、ロバスト最適化は解が保守的になりすぎるというのがやはりツラいところ。 そこで出てきたのが分布的ロバスト最適化という手法で、イメージとしてはいろんな確率分布が考えられる中で、最悪な分布での期待値を最小化するというものらしい。 そうすると保守的になりにくく、かつ不確実性にもある程度対処した計画が得られるんだとか。

実際、数値実験での結果もいい感じで、たしかに本当に悪いときはロバスト最適化の方がいいんだけど、そうでないときは分布的ロバスト最適化の方がコストを抑えられてた。

この分布的ロバスト最適化については調べていきたいなぁ。 (ちなみに2021, 2022くらいでけっこう盛り上がってたっぽい;全然知らなかった(^^;)

機械学習関連の発表

機械学習関連の発表でも興味深いものがいくつかあった。

まずは「最適決定木を用いてアンサンブル学習を近似する単一木構築手法」。

機械学習の精度はけっこう凄くなってるけど、「どうしてそういう判断になったのか?」という説明可能性が低くなるのが難点。 そこで説明性の高い決定木が使われたりして、特に最適決定木というのがあったりするらしいんだけど、ここではまず高性能な分類器を学習させたうえで、その学習器でラベルを振り直したデータを教師データとして最適決定木を作るという手法が紹介されていた。 そうすることで説明性も高く、性能も高い分類器が得られたらしい。

ちょっと不思議なのは、ラベルを振り直してるのであえて正解ではない教師データで学習させていることになるわけだけど、そっちの方が汎化性能が高まったということ。 なんでだろうと思って質問してみたんだけど、どうやらそうすることでノイズとなるようなデータを取り除けて、過学習を防げるかららしい。 これはなるほどなぁってなった。

次に「混合整数線形計画における目的関数の重みを決定する高速な逆最適化アルゴリズム」。

これは多目的最適化で各指標の重みづけをどうすべきかと言う問題で、熟練者の答えから逆に最適な重みを得ようというもの。 ただ、目的関数が滑らかにならないので、勾配法が使えないらしい。 でもそこでSuboptimality損失というのを考えると凸な関数が出てきて、勾配法で解けるようになるとのこと。 このSuboptimality損失というのはちょっと理解できてないけど、問題自体はけっこう解きたくなることが多そうなので、かなり興味深かった。

面白い問題設定の発表

他にも問題設定が面白いなと思った発表があった:

  • 建物内外の移動距離から見た面的施設の最適な形状
    • ショッピングモールとかで、駐車場から入り口まではできるだけ歩かなくて済むようにしたい
    • けど、建物内は(利用者が最短で進むとしても)できるだけ長く歩いてほしい(いろいろ見てほしい)
    • 矩形の敷地に対して建物の形(矩形)や階数はどうなっているといいか
    • 入り口の位置の違いによる分析も
  • パズル型駐車システムの車両出庫における運搬ロボットの有効性評価
    • 駐車場から車を出すパズルみたいなやつw
    • 敷地を効率的に利用して、できるだけ少ない回数で出せるようにもする
    • 運搬ロボットを使って車を運べば、横移動とか旋回も可能になるので、その効果を調べた

いずれも問題設定が面白いよねw 発表内容も面白くて、なるほどなという感じだった。

後者については、同じ向きで止めるならスライドパズルみたいになるのではという指摘も質問で出てきて、なるほどという感じ。 駐車場から車を出すパズルの広告はよく見てたけど、いやまさかそんな実用的な話に繋がるとはなぁw

今日はここまで!