いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

『ふりかえり読本 学び編』を読んでみた。

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この前行ってきた、技術書同人誌博覧会。

そこで買った本の一つである、『ふりかえり読本 学び編』を読んでみたので、感想など。

概要

日々の活動を改善させていこうと思ったときに必要となるのが、『ふりかえり』。
そんなふりかえりの手法をいろんなところから集め、カタログ的にまとめられている。

著者は実際にいろいろなふりかえり手法を試しているようで、その数は80を越えているみたい。
本に載っているアクティビティは20前後なので、その中でもとくに有用だったり、重要なものが選ばれているのだと思う。

ただ、実際に読んでみて思ったのは、ちょっと微妙だなぁ、ということ。
自分も同人誌を書いている身なので、反面教師として、どこらへんを微妙に感じたのか書いておきたい。

単調に感じる

読んでいて一番感じたのが、コレ。
すごく単調。
単調で読むのがツラい。

この本で、紹介されている各アクティビティは、以下のようにまとめられている:

  1. 出典
  2. 目的・ねらい
  3. 所要時間
  4. 事前準備・道具
  5. ステップ
  6. ファシリテーションのポイント
  7. バリエーション

本文でPMBOKの文字も見えたので、おそらくPMBOKを意識したものになっているんだろうとは思う。
PMBOKもまずは大きな枠を作り、それぞれの枠の中で有効なマネジメント手法が整然とカタログのように並べられている)
ただ、整然としてはいるものの、似たような内容が何度も繰り返されるというのは、単調でツラいんよねぇ・・・

これはある意味仕方ない部分もあって、ふりかえり手法はいろいろあれど、根底にある基本的な考え方(=やったことを確認してこれからを考える)はどれも同じなので、どうしても似通ったものになってくるんだと思う。
ただ、そんな中でも、それぞれの手法には何かしらの目的、解決したい問題があって、そのための工夫が入っているはずなので、そういったところにフォーカスを当てて欲しかった。

解決したい問題が分からない

それに関連して、その手法を用いることでどんな問題を解決していきたいのかが、よく分からなかった。

問題意識をまず書いて、それに対する解決案として手法を提案する方がよかったんじゃないかな、と思う。
「ふりかえりでこういった問題点があってうまくいってない」→「それならこういう手法のふりかえりはどう?」みたいな。
各手法で入れられている工夫というのも、何かしらの問題点を解決するために取り入れられてものなわけだから。

ふりかえりの本を買うということは、そのふりかえりの本の内容によって何か解決したいことがあるんだと思う。
もちろん、それはまだ言語化できていないモヤッとしたレベルのものかもしれないけど。
なので、そういった問題意識に対する解決案という形で各手法が提案されていれば、それぞれの手法の違いが際立ってくるし、実際に試してみようという気も起きやすいと思う。

ちょこっと引用するけど、

【コラム3】ふりかえり手法の選び方
(省略)
「このときにはこれを使うとよさそう」という経験則が育ってきます。
本書は、その経験則を育てるためのガイドとして利用していただければ幸いです。
(『ふりかえり読本 学び編』より引用)

うん、その「このときにはこれを使うとよさそう」という経験則が、知りたい内容。
その経験則を言語化して書いて欲しかった・・・

文書構造が分かりにくい

これは節にもよるんだけど、文書構造の入れ子が複雑な場合、いま自分が読んでるのがなんなのか分からなくなることがあって、混乱した。

一例をあげると、「第4章 ひとりのふりかえり」の「2. 1年のふりかえり」というアクティビティの紹介。

この節内の見出しは、以下のようになっている:

  • 2. 1年のふりかえり
    • 出典
    • 目的・ねらい
    • 所要時間
    • 事前準備・道具
    • ステップ
      • 1. 事前準備
        • I. 注力したこと&大きなイベント
        • II. キーとなる人物
        • III. 一言メモ
        • IV. 記号
      • 2. ワークショップによる共有
        • I. イントロダクション
        • II. 1年の流れを語る
        • III. 周囲による深掘り質問
        • IV. 発表者からの質問
        • V. 発表者によるまとめ
        • VI. 他の3人からのコメント
        • VII. 今後どうしていきたいか
    • ファシリテーションのポイント
    • バリエーション

これで103ページ〜126ページまでの計24ページ。
長い・・・

しかも、これは分かりやすく入れ子関係を表現してるけど、本の場合、インデントなどによる入れ子構造の表現はないので、実際にはこう見える:

  • 2. 1年のふりかえり
  • 出典
  • 目的・ねらい
  • 所要時間
  • 事前準備・道具
  • ステップ
  • 1. 事前準備
  • I. 注力したこと&大きなイベント
  • II. キーとなる人物
  • III. 一言メモ
  • IV. 記号
  • 2. ワークショップによる共有
  • I. イントロダクション
  • II. 1年の流れを語る
  • III. 周囲による深掘り質問
  • IV. 発表者からの質問
  • V. 発表者によるまとめ
  • VI. 他の3人からのコメント
  • VII. 今後どうしていきたいか
  • ファシリテーションのポイント
  • バリエーション

もうこうなってると、何が何やら。
いま自分が読んでるのが何の話なのか、さっぱり分からなくなる。
単調さもあいまって、完全に迷子。

解決策としては、以下のような方法がありそう:

  • ステップがさらに細かく分かれる場合、最初にその部分だけの目次も用意しておく。
  • 柱に節も書いておく。
    (奇数ページに「2. 1年の振り返り」と書くなど)
  • 節などの見出しの番号の体裁を分ける。
    (「2. 1年の振り返り」と「2. ワークショップによる共有」が被ってるので、後者は「Step2. ワークショップによる共有」とするなど)
  • 入れ子の分かる番号振りにする。
    (「I. イントロダクション」を「Step2-1. イントロダクション」とするなど)

いいと思ったところ

微妙に思ったところだけ挙げるのもなんなので、いいと思ったところも。

まず、写真や図が多いのは素直にいい。
文字ばっかりだと気が滅入るし、分かりにくいけど、そこで実際のアクティビティの様子が分かる写真があったり、図での説明があったりしたのが、とてもよかった。

あと、柱とノンブルのデザインがちゃんとしていたのが個人的には評価高い。
断ち切りまで枠を伸ばすデザイン、けっこう大変だと思うんだよねぇ。

そして、いろいろ書いたけど、これだけの数のふりかえりのアクティビティを1冊にまとめ上げた本というのは、おそらく他にはないだろうから、それだけでも価値が高い。
自分の引き出しを増やしたり、リファレンスで持っておくには、すごくいいと思う。

今日はここまで!