いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

『飲茶の「最強!」のニーチェ』を読んでみた。

飲茶さんの書いたニーチェ入門本『飲茶の「最強!」のニーチェ』。

飲茶の「最強! 」のニーチェ

飲茶の「最強! 」のニーチェ

出たのはだいぶ前なのだけど(約半年前)、hontoで電子書籍化されないかなーとずっと待ってたら、だいぶ時間が経ってしまった。。。
結局、全然電子書籍化される気配がないので、諦めて紙書籍を買ったのだけど。
電子書籍で読みたかった・・・

ただ、内容自体はさすが飲茶さんという感じで、とても読みやすく、また、分かりやすかった。
なので、軽く感想とか。

概要

本の出だしで説明があるのだけど、この本は出口先生の「最強!」シリーズののれん分けということで、他の「最強!」シリーズと同じ形式をとっているとのこと。
具体的には、表紙の女の子(アキホちゃん)と先生が対話することで、話が進んでいく。
ただ、これがなんかちょっとアレな動画のインタビューみたい(^^;

いろいろな哲学の中でも、特にニーチェの哲学を学ぶと、そういう「前向きな生き方」が身につくんだ。
(省略)

(アキホ)
前向きな生き方・・・。
それはとても興味がありますね。

あれ?
アキホちゃんは、もともと前向きな生き方をしてそうだけど・・・。

(アキホ)
そんなことないです。
さっき仕事が失敗ばかりだと言いましたが、実は、仕事に対して前向きになれなくて・・・。

そうだったんだ。

(アキホ)
最近、毎日思うんです。
私、この仕事本当に好きでやっているのかなって。
なんとなく、ただ惰性でやってるだけの気がして。
あと、彼氏も・・・。

うまくいってないの?

(アキホ)
いえ、そうではないのですが。
やっぱり同じ話で、本当に好きなのかなと・・・。
(省略)

それはたしかにちょっと後ろ向きかもね。
アキホちゃんって、意外とネガティブ性格なんだね。

(『飲茶の「最強!」のニーチェ』より引用)

なんかこのあと、「そんなこと、僕が忘れさせてあげるよ」とか言いながらキスとかし始めそうな雰囲気だけど、これはそういう本ではないw
上で引用したのはそれっぽく感じる極端な例で、大部分はこんな胡散臭い感じの会話ではないので、大丈夫。

ともあれ、こんな感じで対話を使って話を進めていくので、読者が感じるであろう素朴な疑問や反論をその場で拾い上げ、そして丁寧に応えていくという構成になっていて、非常に分かりやすいし、共感も得られやすいと思う。
そして、そうすることによって、いろいろ誤解を受けやすい(「ルサンチマン」とか「神は死んだ」とか「永劫回帰」「力への意志」「超人」というパワーワードに誤魔化され、ニーチェを世界の破壊者ディケイドのように読んでしまう)であろうニーチェの哲学を、分かりやすく、誤解のないように説明している。

白哲学と黒哲学

個人的に面白い表現だなと思ったのが、「白哲学」と「黒哲学」という分類。

冒頭で、そもそも哲学ってなんなのさ、という疑問を取り上げ、それに対する飲茶さんの考えを述べているのだけど、そこで出てくるのがこれらの言葉。
これは、飲茶さんの別著である『てつがくフレンズ』で出てくる「プラトン主義」と「反プラトン主義」を言い換えたものだけど、まさにイメージにピッタリで、言い得て妙という感じ。

それに、中二病くさい感じがすごく好きw
ほら、哲学好きな人って、みんな中二病拗らせてるわけだしw(偏見)

ちなみに、自分の立場については『てつがくフレンズ』の感想に書いた通り。

白魔道士でも黒魔道士でもなく、太極図的な意味で、ただの道士かな?w

大いなる正午と悟り

あと、個人的にとてもよかったと思っているのが、飲茶さんの実体験が書かれていたこと。
なぜかというと、本で得た知識をまとめたものであれば、それは(文章のうまさとかに差はあれど)言ってしまえば「誰でも書けるもの」だけど、実体験を交えて書かれて入れば、それはその経験をした「その人」にしか書けないものになるから。
特に、「大いなる正午」の説明においては、その説明が示す通り、「体験する」ということそれ自体は重要になってくる。

そう。
「すべてのラベルが外れた世界」「架空の価値観が消えた世界」など、そういう実存哲学の言う世界観は、理屈ではなく体験してはじめて理解できるものなんだ。
逆に言えば、一度でも「ああ、本当にそうなんだ!」と体験してわかってしまえば、それは虚しい知識ではなく、その後の人生を一変するような知識となる。
だから、そういう体験をすることが実在哲学においては肝なんだけど、ニーチェの哲学体系の中では、それに相当する体験を「大いなる正午」と呼んでいる。
(『飲茶の「最強!」のニーチェ』より引用)

飲茶さんが実際にどのような体験をしたのか、あと、飲茶さんが哲学をするに至った経緯などは、実際に本で。

それにしても、なんとも東洋哲学的なw
まさに「悟り」の境地w

今日はここまで!

飲茶の「最強! 」のニーチェ

飲茶の「最強! 」のニーチェ