いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

トリテの専門用語について考えてみた。

トリックテイキングゲーム。
通称、トリテ。

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このジャンルは、熱烈な愛好家がいる一方で、苦手もしくは嫌いと言っている人も少なくないと思う。

かくいう自分も、実は最初はトリテが大嫌いだった。

このトリテ嫌いを生み出す大きな要因の一つに、トリテ独特の専門用語があると思う。
そもそも「トリック」ってなんだよ、とか。

ということで、今日はトリテの専門用語について考えてみたい。

(これはTrick-taking games Advent Calendar 2016 - Adventarの18日目の記事です。)

自分とトリテとの最悪の出会い

まず、自分がトリテのルールを初めて読んだときのことを少し。

自分が初めてトリテに出会ったのは、『同人ゲームリンク1』の付録だった。
当時、仲間内でカタンを回しまくっていたんだけど、実はカタン以外にもいろいろボドゲがあるということを知って、そんなときにボドゲの同人誌なんてものもあるんだ、と手に取ったのが、『同人ゲームリンク1』。
その付録としてついていたゲームが、「T-16」というトリテだった。

どんなゲームなんだろう、とワクワクしながらルールを読み出すと、最初から以下のような感じ:

概要
最大16トリック行う、マストフォロー、トリック数宣言型のトリックテイキングゲームです。
(以下略)

・・・
ちょっと待って。
何言ってるのか、全く分からないんだけど。

いや、もちろん、今なら分かるんだけど、ちょっと想像してほしい。
将棋とカタン以外のボドゲはほとんど知らず、初めてトリテに触れる人間が、いきなりこの概要を読んだときの気持ちを。

トリック?
マストフォロー?
トリックテイキングゲーム?
なんじゃそりゃ!!!

まさか、概要の最初から分からない言葉のオンパレードだとは、誰が想像するだろうか。
でも、とりあえず概要だし、きっとこのゲーム特有の言葉か専門用語なんだろうなぁと思いながら、これらの言葉の説明が出てくるのを待ってみる。

・・・
出てこねーし。

しかたないので、なんとか文脈で判断しようとするんだけど、トリテのことを全く知らない人が、そんなこと出来るはずもなく。
結局、ルール読みを断念。
(ちなみに、サークル高天原のたなやんさんをTwitterでフォローしたきっかけは、このルールがまったく意味不明だったので、質問しようと思ったから。結局、質問しなかったけど)

これが自分とトリテとの最悪の出会い。

余談だけど、次に出会ったのは、長谷川登鯉さんがイラストを手掛けてる、さとーふぁみりあさんの「トンネルズ&トリックス」。
完全にジャケ買いw
こちらはまだルールは読めたんだけど、当時は面白さがまったく分からずに、お蔵入り。
ここから完全にトリテ嫌いになって、トリテ好きに戻るには、「パリティ」との出会いを待つことになる。

トリテの専門用語はなぜ難しいのか

さて、ここからが本題。
じゃあ、なんでトリテの専門用語は難しいんだろう、という話。

これには2つ原因があると思っている。
一つは言語的な問題、もう一つはゲームの構造による問題。

言語的な問題

まず、言語的な問題。
英語だと、ディール(deal)、プレイ(play)、リード(lead)、フォロー(follow)といった言葉は、割と自然に感じられる。

例えば、コントラクトブリッジの祖先に当たるホイスト(Whist)のルールを見てみると、次のような感じ:

Play
The player to the dealer's left leads to the first trick.
Any card may be led.
The other players, in clockwise order, each play a card to the trick.
Players must follow suit by playing a card of the same suit as the card led if they can; a player with no card of the suit led may play any card.
The trick is won by the highest trump in it - or if it contains no trump, by the highest card of the suit led.
The winner of a trick leads to the next.
Rules of Card Games: Whist より引用)

これを、トリテの言葉をそのまま使って訳すと、次のような感じ:

プレイ
ディーラーの左のプレイヤーが最初のトリックをリードする。
どのカードをリードしてもよい。
他のプレイヤーは、時計回りで、トリックにカードを1枚プレイする。
プレイヤーは可能であればリードされたカードと同じスートのカードをプレイすることでスートをフォローしなければならない。リードされたスートと同じカードがないプレイヤーは任意のカードをプレイしてよい。
トリックはもっとも高い切り札が勝つ、もしくは、切り札がなければ、リードされたスートで最も高いカードが勝つ。
トリックの勝者が次のリードをする。

ただ、英語を母国語としている人には、おそらく次のように感じられているはず:

カードの出し方
配った人の左のプレイヤーが最初のミニゲームを開始してカードを出す。
どのカードでミニゲームを開始してもよい。
他のプレイヤーは、時計回りで、ミニゲームにカードを1枚出す。
プレイヤーは可能であればミニゲームを開始したカードのマークに従わなければならない。ミニゲームを開始したカードのマークと同じカードがないプレイヤーは任意のカードを出してよい。
ミニゲームはもっとも強い切り札が勝つ、もしくは、切り札がなければ、ミニゲームを開始したカードのマークで最も強いカードが勝つ。
ミニゲームの勝者が次のミニゲームを開始してカードを出す。

割と自然に意味が通じると思う。

leadというのは、みんなに先立って何かを行う(この場合、先にカードを出してトリックを開始する)ということだし、それと対になって、followというのはleadの後について従う(この場合、後からカードを出して、同じスートを出す)と、自然と意味が伝わる。
must followというのも、日本語だとそれで一つの専門用語を成しているように感じられるけど、英語だと普通に助動詞+動詞にしかなっていない。
suitという言葉も日本語だと馴染みがないけど、英語だと普通にトランプのマークのことを指す。

言語には恣意性があり、文化に結びついている部分があるので、ある言語だと簡単に表現できる言葉も、別の言語だと表現がすごく難しい場合がある。
例えば、日本だとゲームで「親」という概念があったりするけど、逆に英語だとどうなんだろう、とか。
(普通に受け入れてしまっているけど、「なんで『親』と『子』という対比なんだろう?」と冷静に考えてみると、不思議)

ちなみに、気になったので調べてみたら、アメリカ麻雀だと「親」と「子」という区別がないんだとか。
アメリカ麻雀 - Wikipedia
三元牌(白・發・中)は"dragons"だし、なぜにドラゴンw
そして、最初に牌を切る人のことはdealerと呼ぶっぽい。
eAMUSEMENTサイト 麻雀格闘倶楽部 ZERO
牌を配るわけではないので、dealerというのも変な話だけど、ポーカーの言葉が流用されている部分があるようなので、おそらくボタン(ディーラーボタン)のポジションの優位性にちなんでdealer (button)と呼ばれているのかも。
(麻雀の場合、ポーカーとは逆で、最初にプレイするポジションの方が有利)

閑話休題

ということで、文化による違いを吸収するためには、単語をそのまま訳すだけでは不十分で、文化にあった言葉に変換をしてやらないといけない。
例えば、日本の文化に合わせるなら、「リーダー(リードプレイヤー)」と「フォロワー」という対比よりも、「親」と「子」という対比の方が分かりやすい。
(実際、リードプレイヤーはスートを決められるので、フォロワーに対して優位性がある)
「フォロー」という概念も、よく遊ばれているトランプゲームである大富豪(大貧民)の概念である「縛り」に変換した方が分かりやすいように思う。

ゲームの構造による問題

けど、そんなふうに変換していっても困ってしまうのが、「ディール」「トリック」という言葉。

「ディール」「トリック」という言葉の翻訳の難しさに関しては、もう一つの原因、すなわち、ゲームの構造による問題が関わってくる。

ゲームのルールを読んでいると、同じようなことが数回繰り返される場合、「ラウンド」という言葉がよく使われる。
この言葉は普通に通じる概念だと思う。
同様の、ゲームの構造を表すために使われる言葉としては、「フェーズ」や「ターン」といった言葉がある。
この入れ子関係については、ゲームによって異なってくるのだけど、一般に以下のような意味で捉えられると思う:

  • ラウンド
    同じような内容を繰り返す。
    第1ラウンド、第2ラウンド、・・・と進んでいく。
  • フェーズ
    異なる内容が順次進んでいく。
    xxフェーズ、yyフェーズ、・・・と進んでいく。
  • ターン
    各プレイヤーの手番。
    Aさんのターン、Bさんのターン、・・・と進んでいく。

例えば、「モダンアート」だと「ラウンド  \supset フェーズ  \supset ターン」という構造で、ゲームは4ラウンド行なわれ、各ラウンドには手札補充フェーズ、競りフェーズ、換金フェーズがあり、競りフェーズではオークショナーが絵画を売りに出すというターンが時計回りに行われる。
あるいは、「ドミニオン」だと「ターン  \supset フェーズ」という構造で、各プレイヤーが時計回りで自分のターンを行い、各ターンでは、アクションフェーズ、購入フェーズ、クリーンアップフェーズが行なわれる。

さて、じゃあトリテはどうかというと、一般には「ディール  \supset トリック  \supset プレイ」という構造。
(ビッドを行う場合、ディールの下にビッドフェーズとプレイフェーズがあり、プレイフェーズの中に各トリックが含まれてくる)
ここで問題なのが、各ディールも各トリックも、それぞれ同じような内容を繰り返すということ。
なので、本来ならば「ディール」や「トリック」ではなく「ラウンド」という言葉を使いたいのだけど、どちらに対して「ラウンド」という言葉を使うべきなのかが難しく、また、一方に「ラウンド」という言葉を使った場合、他方に何という言葉を使えばいいのかが難しいという問題がある。

ちなみに、他のトランプゲームを考えてみると、例えば大富豪(大貧民)やババ抜き(ジジ抜き)、ジンラミーなどには「トリック」の概念はないので、「ディール」を「ラウンド」と呼べばいい。
あるいは、ポーカー(テキサスホールデム)だと、各ディール(ハンド)でプリフロップ、フロップ、ターン、リバーといった「フェーズ」はあるけど、やはり「トリック」はないので、こちらも「ディール(ハンド)」を「ラウンド」と呼べばいい。

そういう意味で、この二重のラウンド構造を持ったトリテというのは、意外と珍しい構造なのかもしれない。
そして、それが「ディール」「トリック」という言葉を訳すのを難しくしている。

これをどうにか出来ないかと一つ考えたのが、スポーツでの数え方。

例えば、一つ思いついたのは、「シーズン」という単位。
各シーズン(普通は1年単位)は同じような内容を繰り返し、しかも「ラウンド」よりも大きな単位を想像させるので、「ディール」を「シーズン」、「トリック」を「ラウンド」と呼ぶのは一つの手かな、と。

あるいは、これは円卓Pのツイートだけど、テニスにちなんで「セット」という単位を使うのもよさそう。
テニスの場合、1つのゲームは「セット  \supset ゲーム  \supset ポイント」という構造になっているので、「ディール」を「セット」、「トリック」を(「ゲーム」だとややこしいので)「ラウンド」と呼ぶ。
まぁ、「セット」と「ラウンド」で、どちらの方が大きな単位なのかは、難しいところだけど。

ちなみに、「ラウンド」にあたる言葉を日本の文化で考えてみると、「番」や「本」、あるいは「局」となりそう。
3番勝負とか、3本勝負とか。
より大きな繰り返しの単位だと、相撲で「場所」という単位も。
(3場所連続優勝、とか)
まぁ、「このゲームは3場所行います」とかは、ちょっと意味不明だけど。

あと、一つの方法として、英語と日本語を混在させてしまって、「ディール」を「ラウンド」と呼んでしまい、「トリック」は「番勝負」を使って表現するというのもアリかも。
例えば、「このゲームは4ラウンド構成で、各ラウンドでは13番勝負を行います」とすると、すごく自然に読める。
ちょっとズルいけど。

ルール記述の例(パリティ

ここまでのことを踏まえて、「パリティ」のルール(4人の場合)を書いてみると、以下のような感じ:

パリティ
普通のトランプ1組(ジョーカーは除く)を使う。
カードの強さはA > K > Q > J > 10 > ... > 2。
このゲームは4ラウンド構成で、各ラウンドでは13番勝負を行う。
最初の配り役を適当に決める。
配り役はトランプをよくシャッフルし、各プレイヤーに手札として13枚ずつ配る。
そして、配り役の左隣がそのラウンドの最初の親になる。
各勝負は、親から順に時計回りでカードを1枚ずつ出す。
親はどのカードを出してもいい。
親が出したカードには縛りが発生し、子は親と同じマークのカードを出さないといけない。
同じマークのカードが出せない場合、他のマークのカードを1枚出す。
全員がカードを1枚ずつ出したら、強さ比べを行う。
親が出したマークのカードで、一番強いカードを出していたプレイヤーがその勝負をとったことになる。
その勝負をとったプレイヤーが次の親になり、これを手札がなくなるまで繰り返す。
手札がなくなったら、得点計算。

  • 偶数回、勝負をとっていたら、とった回数だけ得点
  • 奇数回、勝負をとっていたら、とった回数だけ失点

これで1ラウンド終了で、配り役が左隣へ移る。
そして、4ラウンド行ったらゲーム終了。
点数が一番高いプレイヤーがこのゲームの勝者となる。

けっこう自然に読めるんじゃないかな?

今日はここまで!