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いものやま。

雑多な知識の寄せ集め

ボードゲーム「モダンアート」について語ってみた。(その3)

昨日の続き。

今日は「モダンアート」での「相場観」ーーすなわち、絵画の値段にいくらつけるべきなのかーーについて語ってみたい。

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(ニューゲームズオーダー版のモダンアート)

復習

その前に、まずはおさらいから。

再三になるけれど、ポイントは次のこと。

  • 「モダンアート」で点数が変化するは、自分が絵画を売るときか、自分が絵画を買うときだけ
    • 自分が絵画を売るとき
      お金が入ってくる→確実にプラスの得点になる
    • 自分が絵画を買うとき
      絵画が手に入る→あとで銀行に売るが、プラスになるかマイナスになるかは確定しない

今日の話では、後者がけっこうポイントになってくる。

基本的な考え方

さて、モダンアートの絵画の相場としてよく言われるのは、「その絵画が銀行で引き取られるときの金額の半分」というもの。

これは、絵画の売買で得するのは絵画を売った人と買った人なので、その得の量が出来るだけ同じになるようにした方がいい、ということ。

例えば、$30,000で銀行に引き取られそうだからといって、$29,000で絵画を買ってしまう人がいるけど、その場合、

売った人の儲け:$29,000(確実)
買った人の儲け:最大で$30,000 - $29,000 = $1,000(場合によってはマイナス)

となり、買った人は確かに儲けられる可能性があるけど、それ以上に売った人を大きく儲けさせてしまうので、あまりよくない。

これが、$15,000で絵画を買ったのなら、

売った人の儲け:$15,000(確実)
買った人の儲け:最大で$30,000 - $15,000 = $15,000(ただし、不確実)

となり、買った人以上に売った人が儲けるということを防ぐことが出来る。

ただし

これはあくまで目安。
というのも、絵画を買うことがなければ、自分で絵画を売りに出す以外に「モダンアート」で点数行動はとれないから。

「モダンアート」の相場の実際

仮に、「絵画の相場はその絵画が銀行で引き取られるときの金額の半分」という認識を全員が持っていたとする。

ここで、A, B, C, Dの4人がプレイしていて、次のようになったとする。

  1. Aが絵画を売り出し、Bが$15,000で買った。
  2. Bが絵画を売り出し、Aが$16,000で買った。
  3. Cが絵画を売り出し、Aが$16,000で買った。
  4. Dが絵画を売り出し、Aが$16,000で買った。
  5. 売られた絵画は、最終的に全部$30,000で銀行に買い取られた。

このとき、Aは3回も相場よりも高いお金を出して絵画を買っている。
これは一見、他のプレイヤーに得をさせていて、Aは損をしているように見える。 けど、儲けの計算をしてみると、

  • Aの儲け:15,000 + 14,000 + 14,000 + 14,000 = 57,000
  • Bの儲け:15,000 + 16,000 = 31,000
  • Cの儲け:16,000
  • Dの儲け:16,000

となっていて、Aは他の3人よりもダントツで得をしている!

これはなぜか?

ポイントとなるのは、何回絵画の売買に関係できたか、ということ。
Aは自分が絵画を売る以外に、3回も絵画を競り落としている。
これは、合計4回の得点行動をしていることになる。
一方、Bは2回、CとDは1回ずつしか絵画の売買に関係できていない。
なので、得点行動をしている回数が少ないので、お金をほとんど得られないということになっている。

けど、じゃあ毎回無理をしてでも競りに関係できるようにすべきかというと、そうではない。

例えば、次のようになったとする。

  1. Aが絵画を売り出し、Bが$15,000で買った。
  2. Bが絵画を売り出し、Aが$29,000で買った。
  3. Cが絵画を売り出し、Aが$29,000で買った。
  4. Dが絵画を売り出し、Aが$29,000で買った。
  5. 売られた絵画は、最終的に全部$30,000で銀行に買い取られた。

この場合だと、

  • Aの儲け:15,000 + 1,000 + 1,000 + 1,000 = 18,000
  • Bの儲け:15,000 + 29,000 = 44,000
  • Cの儲け:29,000
  • Dの儲け:29,000

となって、Aはダントツで損をすることになる。
これはなんでかというと、絵画を売り出した人にあまりに得をさせすぎたから。
いくら競りに勝っても、これではダメ。

なので「いくらくらいが相場」という全員の共通認識よりちょっと多めに出して、競りに関われる回数を増やす(でも、出しすぎてはダメ)というのが重要になってくる。

ここで、“「いくらくらいが相場」という全員の共通認識より”と書いたのは、実のところ、取引きされる回数がプレイヤー間で平均化されるなら、「いくらくらいが相場」なのかというのは、(損が出ない範囲で)重要でなくなるから。

例えば、全員の認識が「絵画の相場はその絵画が銀行で引き取られるときの金額の半分」ではなく、「絵画の相場はその絵画が銀行で引き取られるときの金額の2/3程度」という認識だったとする。
その場合、絵画を売る人が得しすぎてしまうから良くないように思うだろうけど、実際にはそうならない。

例えば、

  1. Aが絵画を売り出し、Bが$20,000で買った。
  2. Bが絵画を売り出し、Cが$20,000で買った。
  3. Cが絵画を売り出し、Dが$20,000で買った。
  4. Dが絵画を売り出し、Aが$20,000で買った。
  5. 売られた絵画は、最終的に$30,000で銀行に買い取られた。

となった場合、

  • Aの儲け:20,000 + 10,000 = 30,000
  • Bの儲け:20,000 + 10,000 = 30,000
  • Cの儲け:20,000 + 10,000 = 30,000
  • Dの儲け:20,000 + 10,000 = 30,000

というふうに、全員が同じ程度、儲けることになる。

1回1回の取引を見れば、確かに売った側の得が大きいのだけど、売る手番は全員が行っていくので、相場の認識が共通であれば、その利益に差はあまり出て来ないというわけ。
なので、ぶっちゃけシステム的には(損が出ないのであれば)相場がどの程度であっても特に問題はなかったりする。

それよりも重要なのは、どれだけ競りに関係することが出来たのか、ということ。
ただし、前述の通り、競り落とせた回数を増やしても、それが相場の共通の認識から離れすぎてしまうと、損をしてしまうことになるので、そのあたりを読むのが大切になってくる。

このように、結局のところ、相場観なんてものは共同幻想にすぎなかったり。
精神分析学者の岸田秀は、「お金なんて『お金は価値があるものだ』という幻想をみんなが共有しているがあるからこそ機能する」というふうに唱えていたと思うけど、「モダンアート」の相場観というのも、それに近いものがある。
多くの人が「銀行に買い取られる価格の半分」という共通の認識を持っているから、実際にそれがそのゲームでの相場として現れてくることが多いけれど、実際にはプレイヤー間のインタラクションがそれを決めている。
それを見誤ると、勝てない。
相場を決めるのは、システムではなくて人。

具体的に見てみると、例えばAが「銀行に買い取られる価格の半分」、B, C, Dが「銀行に買い取られる価格の2/3」という認識でプレイしたとして、

  1. Aが絵画を売りに出し、Bが$20,000で買った。
  2. Bが絵画を売りに出し、Cが$20,000で買った。
  3. Cが絵画を売りに出し、Dが$20,000で買った。
  4. Dが絵画を売りに出し、Bが$20,000で買った。
  5. 売られた絵画は、最終的に$30,000で銀行に買い取られた。

となった場合、

  • Aの儲け:20,000
  • Bの儲け:20,000 + 10,000 + 10,000 = 40,000
  • Cの儲け:20,000 + 10,000 = 30,000
  • Dの儲け:20,000 + 10,000 = 30,000

となって、最初は「お、相場よりも高く売れたじゃん、ラッキー」と思っていたAも、そのあとの相場の流れを完全に読み間違えて、競りに関わる機会を失い、結果、儲けを少なくしてしまうことになる。
「システム的に正しい相場がある」なんていう勘違いをしていると、こうなる。
何度もいうけど、相場を決めるのは、システムじゃなくて人なんよ。

そして何より、せっかく競り落としたとしても、それが紙くずになってしまってはマイナスの得点行動をしたことにしかならなくなる。
なので、最終的にモノをいうのは、相場の操作。
無事競り落とすことが出来たのなら、それがプラスの得点行動になるように相場を操作するのが重要になるし、逆に競り落とせなかったのなら、その競り落とした行動をマイナスの得点行動にさせるように相場を操作するというのが重要になってくる。

最後に

まぁ、こんなふうにウンチクを垂れ流してきたけど、やっぱり楽しく遊べるということが何よりも大事。
競りはみんなでワイワイと値段をつけあって、それがヒートアップしてすごい値段になったり、うおおまだ諦めないのかよおおと身悶えしたり、そこまで頑張って競り落とした絵画が紙くずになってガッカリしたりと、そういった盛り上がりがあるのがすごく楽しいと思う。
なので、「ソウバカンガ−」と言って競りゲーを敬遠するのではなく、もっとたくさん遊んで欲しいなって思う。

今日はここまで!

モダンアート modern art 日本語版

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モダンアートカードゲーム

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